1991 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本統治下の植民地社会に関する歴史的研究ー朝鮮・台湾工業化の数量的分析ー
Project/Area Number |
03630048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀 和生 京都大学, 経済学部, 助教授 (60219201)
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Keywords | 植民地工業化 / NICs / 対外依存性 / 戦時経済 / 円ブロック / 国民経済 / 近代化論 / 従属理論 |
Research Abstract |
今回の研究の目的は、戦前日本の植民地社会がその期間中にどのような変化をとげたかを確実な資料で検討することであった。朝鮮と台湾の1910年から44年までの農林水産業と鉱工業の生産統計と貿易統計をコンピュ-タ-に入力して、デ-タ-ベ-スを製成した。その分析の結果は次のようである。1.朝鮮と台湾は植民地期に貿易額が急増し、それはそれぞれの国民経済(NNP、NDP)規模の70〜80%に達するものであった。この数値は同時期日本のそれをも凌駕しており、極端な対外依存的な経済構造が形成されているわけである。そして現在NICsの代表とされている韓国・台湾経済の最大の特微の一つがこの圧倒的な対外依存性であり、その内的関連が注目される。2.両地域の貿易相手は30年代には殆ど日本と円ブロック内地域に限定されており、日本経済圏に完全に包摂されてしまう。その過程で、特に戦時経済期に両地域の経済構造が大きく組みかえられていく。従来植民地は農工問分業の観点で本国の農産物供給地に特化させられると考えてきた。しかし実際にはこれら経済構造の再編によって、両地域の輸出品中での農産物比重は急速に低下し末期には20%程になっている。3.日本からの工業製品輸出と両地域における工業の勃興は並行して進行した。30年代以後の両地域の植民地工業化とは、すなわち日本から生産手段や技術の供給をうけて鉱工業の基盤をつくり、日本を中心とする円ブロック内で資本、労働力、商品等の有機的な関係をとりむすんだ独特な資本主義の成立であったのである。このような事態は、一国史的な近代化論でも従属理論でも把握することはできない。これら植民地工業化と戦後両地域のNICs化との関連や第二次大戦後世界的規模で展開しつつある多国籍企業による第三世界の資本主義的再編成との対比の検討は、今後の研究課題である。
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Research Products
(1 results)