1991 Fiscal Year Annual Research Report
戦時・戦後の日本における農村協同組合組織と農村支配構造の変容に関する実証研究ー産業組合・農業会から農業協同組合への道ー
Project/Area Number |
03630054
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Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
大門 正克 大月短期大学, 経済科, 助教授 (70152056)
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Keywords | 農業協同組合 / 農民運動 / 産業組合 / 農業会 / 経済更生運動 |
Research Abstract |
1.本研究は、戦時体制期から戦後の1950年代に至る時期の日本農村社会の変猊過程を、農村の協同組合組織に焦点を合わせて明らかにすることにあったが、調査研究の結果、以下の点が明らかになった。 2.今年度の調査研究の最大の収穫は、東北地方の山形県庄内地方(鶴岡市周辺)で戦時下から戦後直後にかけて展開した東亜連盟運動の資料(東田川郡黒川村地域)が発堀されたことである。石原莞爾率いる右翼的な東亜連盟の農村部の活動実態が判明する史料が発見されたことは大変珍しい。この史料によれば、太平洋戦争末期にあっても東亜連盟は農村部でかなり活発に活動し、とくに肥料欠乏のもとで、酵素肥料という独自の肥料を通じて農民の支持を集めていたことがよくわかる。黒川村の東亜連盟は農業会にも大きな影響力をもち、農業会役員の多くは東亜連盟の会員であった。また東亜連盟は敗戦後も1946年頃までは影響力を失わず、戦後社会の出発にあたっても少なからぬ影響をあたえた。同地方は戦時体制・右翼的社会運動との関連で協同組合組織のあり方、さらには戦後社会の形成のされ方を検討するのに格好の地域といえよう。 3.これに対し、養蚕地域に属する山梨県中臣摩郡落合村は、戦前・戦後に農民運動が展開した地域として有名であり、戦前には農民組合の影響下にある組合製糸が、戦時期以降は本格的な農協組織が形成された。ここでは、協同組合組織を基盤にして農民が経済的実力をつけ、それを背景に農民運動が展開していることに大きな特徴があったが、農協史料の発堀がまだじゅうぶんではなく、来年度の課題として残されている。 4.以上からすると、戦前から戦後に形成された農協組織のあり方を検討することが、農村社会の歴史的性格を考えるうえでも重要な意味をもっていたことがよくわかる。今後この点をさらに検討したい。
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