1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03640299
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石本 英彦 東京大学, 物性研究所, 教授 (60044773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋元 彦太 東京大学, 物性研究所, 助手 (60202545)
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Keywords | 核断熱消磁 / 量子固体 / 多体交換相互作用 |
Research Abstract |
本年度は、まず単磁区で単結晶の固体ヘリウム3試料を生成するための体積可変型のサンプルセルの試作を行った。今の場合、この試料を超音波トランスジュ-サ-とレシ-バ-の間に作る必要があり、非常に厄介で色々な工夫を行い困難を克服しようとしている。今後は、試料と超音波トランスジュ-サ-,レシ-バ-間の音波の伝搬に大きな問題がないかをチェックしながら、核断熱消磁冷凍機に組み込む為の試料セルの製作に取りかかる。これと並行して、hcp相に近いモル体積のbcc個体ヘリウム3の磁気相図を調べる試みが行われた。この様な圧力の高い試料の核磁気秩序温度は数10μKであり、試料全体をその温度以下に冷却することは今のところ困難で試料自身の核断熱消磁により核スピン系のみを冷却した。その際、ヘリウム3核スピン系と金属電子系の間の熱の出入りをコントロ-ルする熱スイッチとしては、試料と金属超微粉の間の界面熱抵抗が温度の逆二乗に比例するという温度依存性を持つことを利用した。先ず約1mK,3.2Tでヘリウム3核スピンをほとんど100%偏極させた後、この偏極を保つ様に試料磁場と同時に寒剤の磁場も消磁し、試料全体を0.2mK位迄冷却し界面熱抵抗を大きくしてから試料磁場のみを零磁場まで減らした。核秩序のプロ-ブとしては、試料自身の磁気圧力を用いた。その結果、低圧でモル体積の大きなbcc相と同様に、常磁性相,強磁場秩序相,低磁場秩序相を隔てる上部臨界磁場,下部臨界磁場が観測され、磁気相図は広いモル体積にわたってほぼ同じであることが確認された。同様の実験がhcp相についても行われており、その基底状態が強磁性であることを強く示唆する結果が得られている。
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