1991 Fiscal Year Annual Research Report
価電子帯と内殻準位間での分布反転とそれによる紫外レ-ザ-光発振の観測
Project/Area Number |
03640305
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 稔 信州大学, 工学部, 助教授 (80126664)
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Keywords | レ-ザ- / 分布反転 / 光増幅 / 内殻励起 / イオン結晶 |
Research Abstract |
平成3年度(初年度)の経費でダブルモノクロ分光光度計(日本分光工業(株)Ubestー55型)を購入した。この装置を使って、実験に用いる各種イオン結晶中に含まれる不純物、格子欠陥等のチェックを行なった。また、分布反転を実現するため、誘電体ミラ-と微調機構からなる光共振器を設計・製作した。そして、それを光学測定用超高真空糟の中に設置し、レ-ザ-発振のための分布反転の実現を計った。実験は、分子科学研究所のシンクロトロン放射(UVSOR)の強力なアンジュレ-タ-光をポンピング光源として利用し、それをBaF_2結晶に照射して行なった。その結果、共振条件の下で、オ-ジェ・フリ-発光の強度が倍増し、発光寿命が短くなる事が分かった。これらの事実は、BaF_2結晶のオ-ジェ・フリ-発光(170ー230nm)において、レ-ザ-発振が実現していることを強く示唆している。 次年度は以上の研究進展状況を踏まえて、(1)共振器の内部に誘電体ミラ-(反射率100%)以外にビ-ムスプリッタ(反射率90%)を挿入し共振条件の改善につとめる。そのため光共振器の一部を製作し直す。(2)初年度に引き続き、BaF_2以外のオ-ジェ・フリ-発光が確認されているイオン結晶(CsClなど)にも実験を拡張する。実験は主として室温で行い、レ-ザ-発振に伴う、発光スペクトル幅のnarrowing(狭帯域化)及び発光寿命のshortening(短縮化)を観測する。また、レ-ザ-発振の利得スペクトルを測定するとともに、短パルス励起下での誘導放出についても調べる。 更に、初年度に実施した予備的な実験により、オ-ジェ・フリ-発光と自己束縛励起子発光の強度比が入射アンジュレ-タ-光の強度に強く依存する事が見い出された。これは、内殻励起に伴う脱励起過程(多体効果)を考察する上で重要な知見であり、次年度の実験でその詳細を調べたい。
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