1991 Fiscal Year Annual Research Report
イオンエネルギ-損失分析法による集団電子素励起の研究
Project/Area Number |
03640307
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松波 紀明 名古屋大学, 工学部, 講師 (70109304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 雅彦 名古屋大学, 工学部, 助手 (60191889)
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Keywords | イオンエネルギ-損失分析 / 高分解能 / 薄膜 / 電子励起 / プラズモン |
Research Abstract |
固体表面解析用イオン散乱装置として開発した現装置を以下のように改良し、薄膜を透過したイオンのエネルギ-損失測定を可能にした。第一に、表面解析用固体試料の位置に静電型イオン偏向器を取り付け、イオンを無散乱の状態で試料室に導入できるようにした。第二に、静電型イオン偏向器と高分解能エネルギ-分析器との間に、超高真空薄膜試料室を試作した。これらの改良の後、透過型測定ができることを確認し、100keV陽子の場合、約20eVのエネルギ-分解能を得た。 厚さ6〜20nmの自己保持炭素薄膜試料を用い、炭素薄膜を透過した100keV陽子のエネルギ-損失分布を測定した。これらの予備的実験の結果、エネルギ-損失分布のなかに主ピ-クを確認できた。この主ピ-クは炭素薄膜の厚さから予想されるエネルギ-損失分布と良く一致した。一回の集団電子素励起(プラズモン)に対応するエネルギ-損失ピ-クは観測できなかったが、主ピ-クよりも低エネルギ-損失側に予想されない微弱な新しいピ-クが見つかった。この新ピ-クの起源について実験、検討を進めている。又、ゼロエネルギ-損失ピ-クを観測することにより、炭素薄膜中のピンホ-ルの有無を調べられることがわかった。平成3年8月に英国サルフォ-ド市で開催された第14回固体内原子衝突国際会議にてこれらの結果を発表し、論文として印刷中である。今後、金属薄膜中でのエネルギ-損失分布、エネルギ-損失分布の試料厚さ依存性、陽子エネルギ-依存性を測定すれば、イオンエネルギ-損失の微細構造、集団電子素励起に関する知見の得られる可能性は高いと思われる。
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