Research Abstract |
超伝導転移温度Tc近傍ではゆらぎ効果によるexcessconductanceが存在する.その主要な項にmakiーThopsontermがあるがこれは従来物理的意味が確かでないpair breaking parameterδを含んでいる。この量はmaterial,膜作成条件に強く依存する.本研究では,aluminum膜を薄い常伝導金属で覆った場合に観測されているδのenーhancementの原因を追求する目的で,常伝導金属としてgold,silver,copperを選び,実験を行った.試料は真空蒸着,室温で作成した.最近の電子局在の理論からδは電子非弾性散乱時間τinと結び付いている事が知られている.我々は広い温度範囲における磁気抵抗の解析からτinを求め,その散乱頻度1/τinをゆらぎ効果(fluc.),電子ー電子(eーe)相互作用,電子ー格子(eーph)相互作用による散乱頻度の和で表現し,それぞれの散乱頻度に対するovercoatingの影響を調べた.(1)quench condenced filmと異なり,我々の室温蒸着膜ではnormal metalのAl膜への拡散現象がみられた.これは蒸着時のAl膜の抵抗増加,Tc depressionより明らかになった.(2)Cu,Ag,Auとその影響が大きくなるspinーorbit相互作用が働くだけでなく,拡散効果はAl膜の弾性的性質に影響する事が,eーph散乱頻度の変化より明らかになった.Au depositionの場合,pure Al膜に比べ1/τeーphは増加,Ag,Cuでは減少した.我々の以前のSn,Pbの場合,この1/τeーphの増加が両者の大きなδの原因の一つであったが,Tcが低いAlの場合,1/τeーphの項はδにほどんど寄与しない.(3)overdepositionは,理論的には膜の面抵抗だけにしか依存しない1/τfluc,1/τeーeにも影響をあたえた.Al+Auでのδのenhancementはこの1/τfluc,termが利いている.一方,最近の理論では,Tc近傍では1/τflucと1/Teーeに分けて議論する事は不可能という指摘があり,この領域の非弾性散乱mechanismの解明は理論,実験共,今後の問題である.
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