1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03640406
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅村 純三 京都大学, 化学研究所, 助手 (90027061)
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Keywords | ヘテロLB膜 / 熱刺激電流 / 焦電効果 |
Research Abstract |
分子内に双極子能率の大きい極性基を有する両親媒性物質と長鎖脂肪酸などを交互に累積して得られるヘテロLB膜(ラングミュアー・ブロジェット膜)は双極子が一方向を向いた非対称構造をとり、自然界には存在しない形の高次組織体を形成し、焦電素子や圧電素子などの機能性材料として利用できる可能性を有する。特に温度を瞬間的に変えたときに流れる熱刺激電流は、これを高感度赤外線検知器(センサー)として利用できることから注目を浴びている。この熱刺激電流と総称される誘導電流を与える原因は一つではなく、双極子が熱的擾乱をうけて生ずる焦電流や、炭化水素鎖が無秩序に乱れる際に生ずる電流などがある。後者の電流はその詳細な機構が末だに不明であるが、前者の焦電流に比ベると桁違いに大きく、実用的には寧ろこれを利用したほうが、はるかに有利であると考えられる。本年度は、昨年度に引き続き、基礎的データーである脂肪酸およびその金属塩のLB膜の炭化水素鎖が乱れる温度(相転移温度)を補助金で購入したラウダ社製循環恒温水層とFT-IR反射吸収測光を用いて行った。脂肪酸としてはステアリン酸を、金属としてはCdとCaを選び、LB膜の層数を変化させたときの相転移温度の変化を検討した。その過程で、銀を蒸着したガラス基板上のステアリン酸LB膜の反射吸収スペクトル測定において、一層目の単分子層のステアリン酸のC=O伸縮振動が見当たらないことを見出した。その原因としては、イメージ・ダイポールによる物理的効果か,銀塩形成による化学的効果が考えられたが,重水素化ステアリン酸を用いた実験から,その原因は銀塩形成による化学的効果であることが明らかとなった。それと同時に、フェニルピラジン長鎖誘導体とステアリン酸などの直鎖脂肪酸との組合せのヘテロLB膜の熱刺激電流の測定も開始している。
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