1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03640412
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松崎 晋 熊本大学, 理学部, 助教授 (00109638)
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Keywords | ダイヤモンドアンビル / 電導度の圧力依存性 / 相転移 / 金属リン硫化物 / TCNQセシウム塩 |
Research Abstract |
ダイヤモンドアンビルは現在もっとも広く普及した高圧装置であり、従来は少数の高圧専門の研究室に限られていた高圧実験を一般の物理や化学の研究室でも行なえるようにした点で画期的な実験装置といえる。これまでに光学スペクトルやX線の測定に広く使われて来たが、電導度測定には実験上の困難を伴なうため、ほとんど使われていない。そこで本研究は、高圧装置として多くの利点を持つダイヤモンドアンビルを使って、単結晶試料の電導度を高圧下で測定する方法を確立することを目的として行なわれた。その結果、2次元層状物質である金属リン硫化物(MPS_3)の結晶の電導度を直流2端子法で100kbarまで測定することができた。この物質については、以前に我々のグル-プによって光学スペクトルの圧力依存性が測定されており、30kbar付近で相転移が見出れていたが、今回の電導度の圧力依存性の曲線にも同一圧力のところに異常が見られ、光学スペクトルと電導度との密接な関係が明らかになった。また、1次元有機電導体であるテトラシアノキノジメタン(TCNQ)のセシウム塩、Cs_2(TCNQ)_3の単結晶についても80kbarまで、電導度を測定した。その結果、60kbarの圧力下では、常圧に比べて約4桁の電導度の増加が見られた。これらの成果は、平成4年の日本化学会春季年会において発表する予定である。なお、本研究における測定法の妥当性は、電導度の圧力依存性測定の標準物質の1つである金属ビスマス試料の電導度を直流4端子法で約60kbarまで測定することにより確認した。このように、本研究の成功により、ダイヤモンドアンビルを使って単結晶試料の電導度を100kbarまで測定する方法を確立できた。この測定法が普及すれば、従来限られていた電導度の圧力依存性の測定デ-タが大いに蓄積されるものと期待される。
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