1991 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ原子間相互作用による異常原子価の形成及び機能化
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03640435
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤原 尚 筑波大学, 化学系, 講師 (30190101)
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Keywords | 超原子価結合 / ジカチオン / 渡環相互作用 / 酸化還元 / ヘテロ原子 |
Research Abstract |
申請者は、分子内のヘテロ原子(N,S,Se,Te)同士が空間をとうし相互作用できる環状化合物を設計、合成し、ヘテロ原子間渡環相互作用により安定化、生成する新規なシグマ結合を持つジカチオン塩とhypervalent(超原子価)化合物の単離、構造決定を行ない、その化学的挙動を明確にした。結果について以下に略述する。 1)異種ヘテロ原子間でのジカチオン(Se^+‐N^+)とhypervalent化合物の合成:セレン原子を中心とする8員環状化合物、1、5‐dibenzo[b,g][1.5]selenazocine(1)を合成し、その立体配座について^<77>Se‐NMRにより決定した。化合物(1)のセレノキシド(2)と(CF_3SO_2)_2Oとの置換反応により、セレナアザジカチオン(Se^+‐N^+)が生成する。これは、新規な異種ヘテロ原子間でのジカチオンである。一方、セレノキシド(2)とSOCl_2との反応を行なうと、クロロアンモニオセレヌラン(3)を生成する。セレンのhypervalent化合物は硫黄のhypervalent化合物に比べ報告例は少なく、一般にセレヌランの構造はアピカルリガントが酸素やハロゲンから成り、(3)は全く新規な構造である。 2)多中心ヘテロ原子間渡環結合:セレンでジセレナメタシクロファンのベンゼン環を架橋した化合物を合成し、セレン3原子間での相互作用について研究し、酸化還元反応におけるセレン3原子間相互作用ついて明らかにすると共に、新規なhypervalent dicationの単離に成功し、hypervalent化合物の関与する可逆的還元反応を見いだした。ジカチオン及びカチオンラジカルについて3個のヘテロ原子が生成に関与する系は我々の研究が初めてである。 3)テルル原子のジカチオン:環状ジテルラ化合物である1、5-ジテルラシクロオクタンを合成し、その酸化還元挙動をサイクリックボリタンメトリ-法(CV)による電気化学的手法を用いて調べた。その結果、酸化電位は‐0.02Vと異常に低く、CVは可逆性の良い二電子一段階酸化還元波を示し、Te‐Teのシグマ結合によるジカチオン生成を強く示唆している。この知見をもとに、一電子酸化剤であるNOPF_6を2当量用いてジテルラジカチオン(Te^+‐Te^+)塩の単離に初めて成功した。この塩は酸化剤として働くことが分かった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hisashi Fujihara: "Formation,Characterization and Reactivity of a Selenaza Dication[R_2Se^+‐N^+R_3]from N‐Methyl‐5H,7H‐Dibenzo[b,g][1,5]selenazocine" J.Chem.Soc,.Chem.Commun.98-99 (1991)
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[Publications] Hisashi Fujihara: "A New Preparative Method and Reactivity of Diselenide Dication Salt from 5H,7H‐Dibenzo[b,g][1,5]diselenocine" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1052-1053 (1991)
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[Publications] Hisashi Fujihara: "Peri Interaction between Selenium Atoms in Dinaphtho[1,8‐b,c]‐1,5‐Diselenocin and 1,8‐Bis(methylseleno)naphthalene" Tetrahedron Lett.32. 4345-4348 (1991)
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[Publications] Hisashi Fujihara: "First Example of Tetraalkyl Substituted Ditelluride Dication Salt from 1,5‐Ditelluracyclooctane" Tetrahedron Lett.32. 4537-4540 (1991)
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[Publications] Hisashi Fujihara: "New Hypervalent σ‐Selenanes with a Transannular Se‐N Bond from N‐Methyl‐5H,7H‐dibenzo[b,g][1,5]selenazocine" J.Am.Chem.Soc.113. 6337-6338 (1991)
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[Publications] Hisashi Fujihara: "Synthesis of a New Tellurium Heterocycle,5H,7H‐Dibenzo[b,g][1,5]‐tellurathiocin,and Isolation and Reactivity of Its Tellurathia Dication Salt" Chemistry Lett.151-154 (1992)