1992 Fiscal Year Annual Research Report
メンブランフィルター捕集ー固相吸光光度法による痕跡元素の定量
Project/Area Number |
03640484
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
大関 邦夫 弘前大学, 理学部, 教授 (30001845)
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Keywords | メンブランフィルター / 固相吸光光度法 / コバルト / ピリジルアゾ系発色試薬 / PAN / 5‐Br‐PADAP / 5‐Br‐PAPS / ワイン |
Research Abstract |
1 コバルトのメンブランフィルター捕集ー固相吸光光度定量 痕跡量のコバルト(II)イオンを高感度発色試薬を用いて錯体にかえ,メンブランフィルターに捕集濃縮し,フィルター相の錯体の吸光度を反射法で直接測定することにより定量する方法を検討した。その結果,PAN類似のピリジルアゾ系試薬,5‐Br‐PADAPおよび5‐Br‐PAPSがこの目的に適していることが明かとなった。試料に過酸化水素水および,過剰の亜鉛(II)を含む亜鉛(II)‐EDTA溶液(鉄(III)や銅(II)のマスキング)を加え,pH5で,コバルト錯体を生成させる。塩酸を加えて,pHを約1に下げ,ニッケル(II)錯体等を分解した後ろ過することにより,コバルト(III)錯体を選択的にメンブランフィルター(0.2μm,ニトロセルロース)に捕集できる。PANおよび5‐Br‐PADAPを用いて,11種の白ワインを試料としてコバルトを定量し,得られた結果を比較した。PAN法による定量値をy,5‐Br‐PADAP法による定量値をxとしたとき,回帰直線式;y=1.12x-0.06,および相関係数;r=0.981が得られた。ワイン中のコバルト濃度は1.73-6.59ng/mlであった。PANを用いたときの定量値が5‐Br‐PADAPを用いたときの定量値をわずかに上回る結果となった。5‐Br‐PADAP法の感度はPAN法に比べて勝っているが,コバルト(III)‐5‐Br‐PADAP錯体が酸性溶液で比較的迅速に分解される点およびブランク値が大きい点でPAN法に劣っている。今後,5‐Br‐PAPSを用いるコバルトの定量法を確立しPAN法と比較することにより,ppbレベルのコバルトの定量法の正確さについてさらに検討する予定である。 2 「環境試料中の無機微量成分の濃縮法」と題する記事を「ぶんせき」4月号に発表し,吸着濃縮‐固相吸光光度法の長所と短所等について解説した。
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