Research Abstract |
1.定量対象は,銅・鉄・マンガン・亜鉛の4元素であり,試料とした食物は,しじみ貝可食部・胡麻・ひじきであった.胡麻はそのまま,他は乾燥粉末化した後,酸分解により溶液化し,誘導結合プラズマ発光分析または原子吸光分析により各元素の定量を行った. 2.各食物について,品種・産地・採取時期・部位などの異なる試料を分析した.各元素の含有量の大略は,最小願値ー最大値の範囲で示すと次のようであった(単位はμg/乾燥試料1g).すなわち,しじみ貝(12試料):銅20ー56,鉄250ー1080,マンガン7.5ー150,亜鉛140ー210;胡麻(11試料):銅16ー18,鉄67ー130,マンガン12ー42,亜鉛46ー67;ひじき(4試料):銅1.6ー3.3,鉄330ー890,マンガン28ー56,亜鉛21ー34,である。 3.試料のもつ個別の条件から,分析結果は次のように考察される. (1)同じ食物でも条件により含有量が変動しやすいのは鉄とマンガンであり,とくにマンガンでその傾向が顕著であった.今後,栄養成分としてマンガンを取り扱う場合の重要な留意点を見出したといえる. (2)胡麻の品種の差が,ひじきでは部位の違いが,それぞれ分析結果に明瞭に反映した.黒胡麻は白胡麻より,芽ひじきは長ひじき(茎の部位より,重金属元素含有量が最大2倍と多かった。 (3)しじみ貝は異なる産地のものを定期的に入手して分析したが,季節に依存する変動はなく,むしろ,産地間のマンガン濃度の変動が,最大で100倍と極めて大きいことが目立った. 4.ひじきのダイエタリ-ファイバ-(DF:非消化性多糖類)に吸着するミネラル分について,DF定量用酵素(αーアミラ-ゼ,アミログルコシダ-ゼ,プロテア-ゼ)を用いて分解後残存するDFを試料として検討した.その結果,ひじき中の鉄とマンガンの殆んど全部がDFと行動を共にする一方,亜鉛は約50%にすぎないことがわかった。
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