1991 Fiscal Year Annual Research Report
有機タリウムクラウンエ-テル錯体の高い正電荷とソフト性を利用した錯体合成
Project/Area Number |
03640518
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
川崎 吉包 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50029055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茶谷 直人 大阪大学, 工学部, 助手 (30171953)
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Keywords | フェニルタリウムイオン / クラウンエ-テル / フェノ-ル / アニリン / 求電子置換反応 |
Research Abstract |
モノフェニルタリウム(III)イオンは一般に不安定な化合物であるが18ークラウンー6に代表されるクラウンエ-テルを配位させることにより安定化させることが出来る,ということを見出して来た。このクラウンエ-テル錯体は,2+という高い正電荷を持っているので,このことを利用し,比較的エレクトロンリッチな芳香族化合物,フェノ-ル,あるいはアニリン誘導体に対する求電子置換反応について検討した。 まず,モノフェニルタリウムイオンの求電子置換反応におけるクラウンエ-テルの効果について検討した.クラウンエ-テルの配置していないモノフェニルタリウムイオンとフェノ-ルとの反応において,求電子置換反応は全く起らず,モノフェニルタリウムイオンの再分配反応生成物のみが得られた。これに対し,18ークラウンー6が配置したモノフェニルタリウムイオンとフェノ-ルとの反応では,フェノ-ルのパラ位にタリウムイオンの選択的求電子置換反応が起こった。一方パラクレゾ-ルは反応せず,原料回收となった。これらより,モノフェニルタリウムイオンの求電子置換反応では,1)クラウンエ-テルの存在は不可欠であり,2)強いパラ選択性を示すということが明らかになった。次にクラウンエ-テル環にイオウ原子を含む種々のチアクラウンエ-テル類をモノフェニルタリウムイオンに配価させ,フェノ-ル類に対する求電子反応を試みたが,この場合反応は起らず,原料回收となった。これはチアクラウンエ-テルのイオウ原子をフェニル基の反対側からタリウム原子に配位し,フェノ-ルの接近を阻示しているためと考えた。 上述の求電子反応をアニリン類についても検討した。アニリンとの反応ではタリウムイオンの脱クラウンエ-テル反応となったが,ジフェニルメチルアミンとの反応では窒素原子のパラ位でのみタリウムイオンの求電子置換反応が起こるということが明らかになった。
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[Publications] 垣内 史敏,川崎 吉包,秋田 浩司,榎本 憲秀,大江 浩一,茶谷 直人,黒沢 英夫,村井 真二: "Electrophilic of Phenol and its Detivatives with Phenylthallium(III)Crown Ether Complexes" Organometallics. 10. 2056-2060 (1991)
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[Publications] 垣内 史敏,大江 浩一,茶谷 直人,黒沢 英夫,村井 真二,川崎 吉包: "Electrophilic Thallation of Aniline Derivatives and Nitrogen Hetrocycles with Phenylthallium(III)18ーCrounー6 Diperchlorate" Organometallics. 11. 752-756 (1992)