1991 Fiscal Year Annual Research Report
特異的磁性を示すニッケル(II)二核錯体の合成と磁気的性質
Project/Area Number |
03640523
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
時井 直 佐賀大学, 理工学部, 教授 (40039269)
|
Keywords | 二核ニッケル(II)錯体 / カルボン酸ニッケル(II)錯体 / 反強磁性的相互作用 / スピン平衡 / 磁化率 |
Research Abstract |
特異的な磁性を示すカルボン酸二核ニッケル(II)錯体の合成を行い、[Ni(RCOO)_2・L]_2の組成で示される二核錯体が多数得られた。R=Me_3のピバリン酸錯体が6種で最も多く、R=Et_2CHのジエチル酢酸錯体が2種類、R=Me_2PhCのα,αージメチルフェニル酢酸錯体が2種類、R=MePh_2Cの2,2ージフェニルプロピオン酸錯体が2種類、およびR=MePh_2Siのカルボシランを含む錯体が2種類単離された。これら生成錯体の磁気的性質を調べた。磁気モ-メントは室温で1.64ー2.34BM,また77Kではほとんど反磁性になり、これは通常の常磁性ニッケル(II)錯体の磁気モ-メントが3.2BM前後であるのにくらべ、異常に低く、高スピン型ニッケル(II)二核錯体のものと比較しても異常であることがわかった。単結晶が得られた錯体についてはX線結晶解析を行い、2個のNi^<2+>イオン間に4本のカルボキシラトで架橋配位した、いわゆる“酢酸銅型"二核構造であることが判明した。構造解析に成功した6種類の錯体についての論文をActa Cryst.に投稿した。磁性については、(1)ニッケルイオン間に反強磁性的スピン交換相互作用が強く働いている。(2)ニッケルイオン間に反強磁性相互作用が無いか、あるいはあったとしても弱い(J【similar or equal】-10cm^<-1>)ものであり、低スピン( ^1A_1)【double half arrows】高スピン( ^3B_1)の平衡状態にある。の2通りの考え方がある。磁性と構造の相関から言えば(2)の方が矛盾が少ないわけであるが、間題点はスピン平衡錯体であるといえる決定的証拠が少ないことである。この点に対する一つの解決策としてはNiーZnのヘテロ二核錯体を合成しその磁性を調べることである。現在、このヘテロ金属二核錯体を1種類単離し磁性を検討しているが、(2)のスピン平衡の可能性は少ないと思えるデ-タが得られている。今後NiーCuなどのヘテロ金属二核錯体の合成例を増やし、カルボン酸ニッケル二核錯体の磁性と構造の相関を明らからする。
|
-
[Publications] Mitsuo Morooka: "Dimeric Nickel(II)Corboxylates and Silanecarboxylate,[Ni(Me_3CCOO)_22,5ーlutidine]_2,[Ni(MePh_2CCOO)_2quinoline]_2・2CHCl_3,[NiーMe_2PhCCOO)_2quinoline]_2,[Ni(Me_2CCOO)_22ーEtーPyridine]_2,[Ni(Me_3CCOO)_22ーpicoーlive]_2and [Ni(MePh_2SiCOO)_2Ph_3P]_2" Acta Crystollogr.,Sect.C,.