Research Abstract |
環境指標として,いろんな生物がとりあげられ,土壌動物もその対象となることがある.たしかに土のあるところ,どこにもいる土壌動物は,陸上の生物の世界ー生産者としての緑色植物と,その生活を支える共生生物,とくに土の中の根圏での共生者としての土壌動物は,環境指標としてまことに重要な存在である.しかし土壌動物のおおくは,科や目の単位でしか把握できない.その中で,カマアシムシ類(Protura)は,体長1ミリ内外の小さな虫であるが,かなりの精度で種(species)単位での情報の蓄積が可能となっており,平成4年末で日本列島内2975地点での調査記録が集積されている.この小動物は,節足動物の系統上,特異な位置にある孤立した一群で,世界中の既知種550余,日本からは56種がしられている.本年度は,北海道および南西諸島で現地調査をおこなった他,本州各地でも新調査をすすめた.これらの結果は,項目11にあげたように,宮古島からクメカマアシムシEosentomon Kumei,石垣島からトサカマアシムシBaculentulus tosanus,種子島からウエノカマアシムシNopponentomon uenoi uenoi,北海道からミチノクカマアシムシAcerentulus Omoiを新しく記録した他,日本列島内約200地点からの新しい調査記録のとりまとめをした.問題は,いま手元にある資料の中に分類学上の位置を確定しかねているものが3種あることである.これらはおそらく新種とおもわれるが,中国大陸,シベリアから記載されている種との関係が微妙で,目下検討中である.なんとか平成5年度末までには結論をだしたいとおもっているが,現在調査をすすめている西表島とその周辺の島でも,日本列島未知のものがみいだされており,つぎつぎとむつかしい課題が出現している.
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