1991 Fiscal Year Annual Research Report
細胞遺伝学的,集団遺伝学的手法を応用したヨモギハムシ種群の種間社会の解析
Project/Area Number |
03640551
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤山 静雄 信州大学, 理学部, 助手 (70109164)
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Keywords | ヨモギハムシ種群 / 種間社会 / 成虫の個体問関係 / 染色体数の異なる個体群 / 色彩二型 |
Research Abstract |
ヨモギハムシ種群の染色体数の異なる2型が生息する場所で染色体数,色彩2型の調査を行なった。2m♂=31の型は開けた環境下を占めていたのに対し,2n♂=41の型は周囲が樹木で覆われた閉鎖的な環境下で優占していた。この地域で成虫の発生消長を調査したところ,染色体数の少ない型の出現が1〜2週間,早かった。これが両者の生理的特性の違いによるのか微環境の差によるのかを明らかにすることはできなかった。両地域の移行地帯ではしばしば両方が生息していた。この範囲は直線で100〜300mの幅で,かなり狭かった。ここでは両者の混生がみられたが,今回の調査では交雑個体は確認できなかった。染色体数の異なる個体の雌雄が1m以内に接近して観察されることがなかったので,この調査では両者の交尾が回避される要因を明らかにすることはできなかった。また,一般に2n♂=31の型が2n♂=41の型を駆逐していく可能性が指摘されているが,この地域においては季節的に境界が移動することはなかった。秋の調査では台風の来襲があり,ヨモギ群落が大きな被害を受けたため,長期の連続観察はできなくなった。かわりに,色彩2型の頻度が地域によって大きく違っている紀伊半島において,これらの違いが染色体数の異なる個体群の分布によるのか否かを調査したところ,すべての個体群で少ない染色体数をもちながら,優占する色彩型が異なっていることがわかった。また,頻度は徐々に変るのではなく,少なくとも1つの町村単位より狭い範囲で急変していることがわかった。 染色体数,色彩型の異なる個体群の増殖については境界域の個体群を用いて飼育を行っており,野外実験に向けて準備中である(備品使用)。 室内実験では,一部の個体は染色体数の異なる個体同士で交尾を行っており,前述の野外調査の結果とは異なっている。この点については、今後さらに検討する予定である。
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