1992 Fiscal Year Annual Research Report
細胞遺伝学的、集団遺伝学的手法を応用したヨモギハムシ種群の種間社会の解析
Project/Area Number |
03640551
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤山 静雄 信州大学, 理学部, 助教授 (70109164)
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Keywords | ヨモギハムシ種群 / 種間社会 / 染色体数の異なる個体群 / 交雑 / 色彩二型 |
Research Abstract |
染色体数の異なるヨモギハムシ種群の種間の相互作用をみるため、松本市薄川および松本市美ヶ原で採集した成虫に産ませた卵をふ化させ飼育し、成虫を大量に得た。これら成虫を放虫し、9月〜11月にかけて野外調査を行なった。放虫にあたっては個体識別マークをつけ、調査地には、放虫密度を1頭/m^2程度、5頭/m^2、10頭/m^2の3つの条件下で、生息密度の違いと種間の相互作用の変化について調査した。生息密度が最も高い条件下では種間交雑率は20〜30%と非常に高かった。中間の生息密度では、10%強と交雑率は低下した。さらに、低密度下では、種間交雑は全く見られなかった。この観察期間中、日当り条件などの環境の異質性のある所では、種によって微妙に好む環境が異なるようで、染色体数2n=41、42の種は、日陰の環境にとどまったのに対し、染色体数2n=31、34の種は日当の良い環境にも多く見られた。 浜名湖周辺において、色彩二型の頻度について詳細な調査を行なったところ、東の地域ではドウガネ型の頻度が30〜50%(表現型)と高かったが、浜名湖より西の地域ではドウガネ型の表現型頻度は0〜10%で安定して低かった。色彩二型の頻度が大きく変化する地域は20km以内の非常に狭い範囲であった。これらの違いの原因としては、中央構造線、山脈の末端の存在、浜名湖等の物理的障壁が考えられたが、この中では浜名湖と山脈末端の存在が大きく影響していると予想された。 以上のように種間および種内の社会状況は、生息密度によって大きく影響を受けることや物理的要因、特に日当りや植生、植物の刈り取り等の人為的影響により大きく変化することが明らかになった。
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