1992 Fiscal Year Annual Research Report
モンシロチョウ属の食性の進化に関する遺伝的背景についての生態学的研究
Project/Area Number |
03640559
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Research Institution | Kyoto College of Medical Technology |
Principal Investigator |
佐藤 芳文 京都医療技術短期大学, 診療放射線技術学科, 講師 (80215871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大崎 直太 京都大学, 農学部, 講師 (70127059)
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Keywords | モンシロチョウ属 / エゾスジグロシロチョウ / キレハイヌガラシ / アオムシコマユバチ / 食性の進化 / 寄主転換 |
Research Abstract |
北海道における数回の調査の結果、従来の知見とは異なり、コンロンソウからはスジグロチョウ(スジグロ)のみが得られ、キャベツ、ダイコンなどの栽培種からは、モンシロチョウ(モンシロ)のみが得られた。近年導入されたキレハイヌガラシ(キレハ)からは、モンシロとエゾスジグロチョウ(エゾ)幼虫が採集できた。すなわち、エゾはキレハからしか採集できなかった。そこで、エゾ雌成虫に対して、京都での食草となっているスズシロソウ(ハタザオ属)、スジグロの食草のコンロンソウ(タネツケバナ属)、イヌガラシおよびキレハ(イヌガラシ属)の4種間での産卵植物選択の実験を行った。その結果、エゾはキレハを選好し、わずかにイヌガラシに産卵したのみで、他の2種には産卵しなかった。これらの食草での、幼虫の成長・発育を調べたところ、キレハで最も成長が速く、蛹体重も最大であった。したがって、4種の中ではキレハが最も良質の食草と言える。ところが、産卵植物選好のこの傾向は、キレハに出会ったことのない京都産のエゾでも同様であった。したがって、北海道のエゾにみられる選好性は、自然選択の結果とは言えない。しかし、少くとも、たまたま利用したものの生存率が高くなることによってキレハへの寄主転換を導く要因にはなるであろう。さらに、京都産のエゾが最も質の劣るスズシロソウを選択する究極要因として、アオムシコマユバチの寄生を避けることができることを明らかにしてきたが、北海道の場合にも、キレハ上のモンシロとエゾ幼虫では、エゾに対するハチの寄生率がかなり低くなっていることが分かった。これはエゾとモンシロとで、食草上の利用場所・微視的環境に差があるためと考えている。したがって、良質かつ寄生者からの回避という条件が働くことによって、エゾは極めて短期間に、土着の植物から帰化植物に食草を転換した可能性がある。
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