1991 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物組織のカルス化初期過程における細胞膜及び液胞膜のプロトンポンプの役割
Project/Area Number |
03640562
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
長谷 昭 北海道教育大学, 教育学部・函館分校, 助教授 (80142769)
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Keywords | カルス化 / 細胞膜 / H^+ーATPア-ゼ / キクイモ |
Research Abstract |
キクイモ塊茎柔組織の組織切片をムラシゲ-スク-グの培地で培養すると,オ-キシン(2,4ーD)の有無にかかわらずほとんどlagなしに急激なバナジン酸感受性細胞膜ATPaseの活性化が起こり,培養開始後12時間目で塊茎組織の4倍近くまで増加した。この立ち上がりの早さは呼吸活性の増加の6倍以上であり,最も素早い障害反応の1つと思われる。この間のATPase活性は常にオ-キシン存在下での培養組織で若干(5〜14%)高く,またこの酵素タンパク質と推定される分子量105kDaのタンパク質(以下PM105と略記)の増加も,オ-キシン存在下でより速やかに起きた。しかし培開始後2日目以降ではいずれもほぼ一定値で,カルス誘導の有無による差は認められなかった。一方培養初期での細胞膜タンパク質の合成を調べたところ,PM105の選択的合成が特に培養開始後2日目までの培養組織に認められ,この酵素活性の増加が酵素タンパク質のde novo合成の誘導による可能性が示唆された,この点に関しては更にRNA・タンパク質合成阻害剤を用いた実験によって確認中である。 以上の結果をもとに,細胞膜H^+ーATPaseのカルス誘導における役割に関する,2種類の実験を行なった。第1に,障害反応による急激な細胞内の生理的変化が落ち着く培養開始後5日目までオ-キシン無しで培養した組織を,オ-キシンを含む培地に移植しカルス誘導し,移植後5日目までの細胞膜ATPase活性の変化を調べた。PM105の量的変化な認められなかったものの,活性は5〜7%増加した。第2に,H^+ーATPase活性の特異的阻害剤であるバナシン酸と促進剤であるFusicoccinの効果を調べた。後者はほとんどカルス誘導に影響しなかったが,前者はオ-キシンの効果をほとんど打ち消した。以上のことは,細胞膜H^+ーATPaseのカルス誘導への関与を強く示唆するものであった。更に今後精製酵素を用いて,H^+ーポンプ活性に関する研究を予定している。
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Research Products
(1 results)