1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03640589
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
今市 涼子 玉川大学, 農学部, 助教授 (60112752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 雅啓 東京大学, 理学部, 助教授 (20093221)
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Keywords | 比較形態 / イワヒバ属 / 担根体 / 内生的発生 / 根 / マツバラン科 / 地下茎 / 軸状器官 |
Research Abstract |
インドネシア国モルッカ諸島のセラム島で採集した大形の熱帯産イワヒバ属3種について研究を行いその成果を公表した。担根体は茎の分岐部より外生的に発生し、数回二又分枝を繰り返す。分枝した枝のそれぞれの頂端には根冠はなく、1個の頂端細胞が表層に存在することから,枝は担根体であることがわかる。担根体は3〜4回二又分枝を行った後、頂端細胞を消失させる。それと同時に表層から2細胞層内方の2ヶ所に根の頂端細胞が形成される。筆者らが温帯生のコンテリクラマゴケで示したのと同様、担根体の頂端細胞と根の頂端細胞の発生は不連続で、後者は明らかに新たに担根体組織内部に形成される。根の頂端細胞は上方に根冠組織を作り、担根体組織を溶かしながら伸長し外に出ていく。このような発生様式は内生と言わざるを得ない。これまで多くの研究者によって研究材料として用いられてきた温帯生イワヒバ属は小形であるため、担根体は二又分枝を起す前に根を作ってしまうものと考えられる。以上の事実は担根体は一部であるとする地上根説を否定する。担根体は「二又分枝を繰り返し、根を作る軸状器官で、種子植物の3大器官である根、茎,葉のどれとも相同でない独立の器官」と考えられる。この軸状器官は化石シダ植物である鱗木類のrhizomorphに最も近縁である。 担根体は独立の軸状器官であることが示されたため、マツバランの地下器官が注目される。これは地下部で短く匍匐し、頂端に1個の頂端細胞を持ち頂端分裂組織の構造が茎頂のそれと似ていることから、多くの研究者は茎と相同器官、すなわち地下茎と考えている。しかし、これは地上茎と分出させるだけで根も葉も作らないことから担根体との関連が示唆される。現在筆者らはマツバラン、イヌナンカクランの地下器官の研究に移っている。
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