1993 Fiscal Year Annual Research Report
クモ類の眼の絶対感度と分光感度変動の比較生理学的・行動学的研究
Project/Area Number |
03640608
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Research Institution | Kyushu Institute of Design |
Principal Investigator |
山下 茂樹 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (30091250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 簡子 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 教務員 (30253545)
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Keywords | クモ / 眼 / 視細胞 / 遠心性神経繊維 / 神経伝達物質 / オクトパミン |
Research Abstract |
コガネグモの視細胞の応答は脳内に細胞体を持つニューロンの情報により遠心性の調節を受けており、恒常暗黒下では感度のサーカディアンリズムを示す。コガネグモと同様な遠心性の調節を受けているカブトガニやサソリの眼では、遠心性の神経伝達物質はオクトパミンであると報告されている。今回我々は、オクトパミンのコガネグモ前側眼の応答に対する作用について調べた。前側眼は、コガネグモの8個の眼のなかでは最も単純で、視細胞はわずか50個程度しか含まれていない。夜には、昼に比べ閾値が1 log以上低下する。また、夜のERGは2つのピークを示したり昼に比べピークが幅広くなったりするが、同様の現象は、単一視細胞でも観察される事から、前側眼の視細胞には性質の異なるチャンネルが存在するものと考えられる。一方、可能性としては性質の異なる視細胞が電気的に結合している事も考えられるが、現在のところ、前側眼に性質の異なる2種類以上の視細胞が存在するとの積極的な証拠は全く得られていない。昼、生理的食塩水中にオクトパミンを投与すると、閾値が2 log近く低下し、応答波形のピークが2つに分離したり幅広くなったりする事が観察された。このオクトパミンの作用は、視神経を介した遠心性の作用、即ち、恒常暗黒下でみられる昼・夜間期の変化と大変良く似ていた。しかし夜、内因的に閾値が十分に低下した状態でオクトパミンを作用させても、その効果はほとんど見られないか、見られても昼の場合に比べ小さなものであった。これらの結果は、コガネグモの遠心性神経繊維から放出される伝達物質はカブトガニやサソリ同様オクトパミンである事を示している。
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