1992 Fiscal Year Annual Research Report
異種チロシナーゼ遺伝子を利用した魚類色素細胞の分化に関する研究
Project/Area Number |
03640614
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 二郎 慶応義塾大学, 法学部, 教授 (80051241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 裕一 慶応義塾大学, 法学部, 嘱託
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Keywords | トランスジェニックメダカ / チロシナーゼ遺伝子 / メラニン形成 / メラノフォア / メラノソーム |
Research Abstract |
チロシナーゼ遺伝子mg-Tyrs-Jは、マウスよりクローニングされたものから転写・制御領域のみを再構成したミニ遺伝子で、マウス起源の遺伝的にメラニン産生能を欠く色素細胞に導入すると発現しメラニンを産生することが解明されている。本研究ではこの遺伝子を進化水準の異なる緋メダカに導入してトランスジェニック魚を作成し、これを利用し色素細胞分化の機序を解明することを目的としている。平成4年度では、 (1)エレクトロポレーションによる緋メダカ受精卵への遺伝子導入によるトランスジェニックメダカの量産、 (2)組換え体間の交雑による導入遺伝子の継承の確認、 (3)組換え体におけるマウス型チロシナーゼの組織・細胞での発現様式の検索が計画された。成果として、 (1)エレクトロポレーションによるチロシナーゼ遺伝子の導入では処理卵の約7%が野生型に近い色斑を持つ個体として生育したこと、 (2)野生型色斑を示す組換え“founder"間の交雑では、すべてのF1の皮膚に明瞭なメラニン沈着が認められ、優性型の形質発現を示すこと、 (3)メラニン沈着は緋メダカに存在するamelanotic melanophoreに相当する色素細胞にのみ認められ、黄色素胞や白色素胞には認められず、導入されたチロシナーゼ遺伝子はメラニン産生能を潜在的に持つ色素細胞で特異的に発現すること、 (4)トランスジェニック緋メダカに存在するメラノフォアーは抗マウスチロシナーゼ抗体に特異的に反応するので、これらの個体ではマウス型チロシナーゼの発現が認められること、 (5)組換え体の皮膚メラノフォアーに分布するメラノソームはメラニン沈着を伴う微小顆粒の集合体の形態をとり、境界膜とこれら内部構造との間に広い空間が存在し、メダカ野生型に分布するメラノソームとは明かな差異が認められることが解明された。
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[Publications] J. Matsumoto, T. Akiyama, E. Hirose, M. Nakamura, H. Yamamoto, T. Takeuchi: "Expression and transmission of wild-type pigmentation in the skin of transgenic orange-colored variants of medaka (Oryzias latipes ) bearing the gene for mouse tyrosinase." Pigment Cell Research. 5. 322-327 (1992)
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[Publications] E. Hirose, J. Matsumoto: "Deficiency of the gene B impairs differentiation of melanophores in the medaka fish, Ozryas latipes: Fine structure studies" Pigment Cell Research.
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[Publications] J. Matsumoto, E. Hirose, K. Miyazaki, H. Yamamoto, T. Takeuchi: "Production of transgenic orange-colored variants of medaka bearing mouse tyrosinase gene by means of electroporation and expression of wild type pigmentation in their skin." Zoological Science. 5. 1213 (1992)