1993 Fiscal Year Annual Research Report
異種チロシナーゼ遺伝子を利用した魚類色素細胞の分化に関する研究
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03640614
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 二郎 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (80051241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 勝巳 慶應義塾大学, 法学部, 嘱託
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Keywords | トランスジェニックメダカ / チロシナーゼ遺伝子 / メラノフォア / メラノソーム / メラニン形成 / メンデル遺伝 |
Research Abstract |
純系緋メダカ(bbRR)受精卵(589個)にエレクトロポレーション法によりマウスチロシナーゼ(mg-Tyrs-J)を導入すると、皮膚にメラニン沈着をみる成魚(38匹)が得られた。これらトランスジェニックfounderからメラニン沈着の顕著な個体7つがいを選出し交雑するとメラニン沈着量の異なる多様なF1が発現した。メラニン沈着量の多い個体の体色は黒褐色で野生型(BBRR)に匹敵した。これら黒褐色の体色をもつ個体の多くは成長と共に黒色の斑紋または縦縞を形成した。トランスジェニックfounderを純系緋メダカと交雑するとメラニン沈着をもつものともたないものがほぼ1:1の比で発現する事例が得られた。トランスジェニック緋メダカの皮膚組織を光学顕微鏡的に検索するとメラニン沈着は細胞の大きさの異なる2型のメラノフォアに限定され、ザンソフォアには認められず、メラニン形成は緋メダカ皮膚に分布する“amelanotic melanophore"で特異的に惹起されていると推測された。抗マウスチロシナーゼ抗体を用いての免疫組織化学法による検索では、トランスジェニック緋メダカのメラノフォアにはマウス型チロシナーゼが分布し、反応性はメラニン沈着の増加と共に減少している事が示された。電子顕微鏡法による検索では、これらのメラノフォアに分布するメラノソームは格子状結晶構造を内部にもち、野生型メダカにみられる“multivesicular"構造を基礎としたメラニン形成とは異なる事が強く示唆された。これらの知見は(1)導入されたマウスチロシナーゼ遺伝子の制御領域はメダカでもメラノフォアを識別し細胞型特異的に発現しマウス型チロシナーゼを産生し、(2)導入された遺伝子は生殖細胞系列を介して継承され、(3)その遺伝様式はメンデル遺伝の法則に従うことが示された。トランスジェニック緋メダカのF1にはザンソフォアを全く欠く個体が頻度高く発現するので、この細胞型の発現とチロシナーゼ遺伝子との密接な関係が示唆された。
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[Publications] E.Hirose,J.Matsumoto: "Deficiency of the gene B impairs differentiation of melanophores in the medaka fish,Oryzias Latipes:Fine structure studies." Pigment Cell Research. 6. 45-51 (1993)
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[Publications] J.Matsumoto,E.Hirose,K.Miyazaki,H.Yamamoto,T.Takeuchi: "Integumental pigmentation in transgenic orange-colored variants of medaka fish bearing the gene for mouse tyrosinase:Its selective expression in their melanogenesis-competent cells." Pigment Cell Research. 6(Abstract). 324 (1993)
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[Publications] J.Matsumoto,K.Miyazaki,H.Yamamoto,T.Takeuchi: "Genetics of wild-type skin coloration in transgenic orange-colored variant of medaka bearing the gene for mouse tyrosinase." Pigment Cell Research. 6(Abstract). 376 (1993)
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[Publications] T.Seikai,E.Hirose,J.Matsumoto: "Dual appearances of pigment cells from in vitro cultured embryonic cells of Japanese flounder:An implication for a differentiation-associated clock." Pigment Cell Research. 6. 423-431 (1993)