1991 Fiscal Year Annual Research Report
異なる環境に生息する広塩性魚類における浸透圧力節能の多様性
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03640632
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
小笠原 強 神奈川大学, 理学部, 助教授 (20167315)
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Keywords | 浸透圧調節機構 / 魚類 / 淡水 / 海水 / 適応機構 / 血中Na値 / メダカ / ネオンテトラ |
Research Abstract |
本研究は、脊椎動物のなかでも種数がとりわけ多く、その生活様式も多様な魚類をもちい、その浸透圧調節能の基本的なメカニズムを比較・検討し、生物の環境への多様な適応機構について何らかの考察を得ることを目的とするものである。これまでは、メダカおよびアマゾンの塩分濃度のきわめて低い流域に起源をもつ小型の熱帯魚ネオンテトラについて、さまざまな濃度の希釈海水あるいは塩類溶液へ移行し、以下のような結果を得た。 1.メダカ(1)本来の生息環境である淡水中での血中Naは、145mMほどである。(2)これを10%,25%希釈海水に移行し、1週間飼育した。経時採血をおこなったが、25%海水中に移行後3時間目に155mMまで上昇がみられたが、その後、淡水中でのレベルと同様になった。10%海水では、血中のNaに変動 はみられなかった。(3)33,40あるいは50%海水中でも生存可能である。(4)蒸留水へ移すと、血中Naは低下し続け、1週間後には約120mM程となり死亡する個体もみられた。2.ネオンテトラ(1)淡水中での血中Naは、145mMほどである。(2)10%海水中では、Naはほとんど変化しなかった。(3)15%海水中では、1週間目にNaの著しい上昇がみられた。(4)25%海水中では、血中Naが160mM以上になり、3日目以降は死亡する。(5)33,40,50%海水へ移行すると、生存は3〜1時間が限度であった。(6)一方、蒸留水に移すと、一時的に血中Na値は減少するが回復し、淡水と同じレベルとなった。(7)50%海水と同濃度のNaCl,MgCl_2,CaCl_2溶液に移行すると、Nacl溶液中では血中Naが急激に上昇し、1時間以上の生存は不可能であった。これら2種はともに淡水魚でありながら、とくに、水分排泄にかかわる浸透圧調節能に違いがあることが推測される。今後、血液の浸透圧をも計測し、鰓、腸、腎臓等についての組織学的懸索検を加えながら、比較・検討し、現在不明の点の残されている淡水魚の浸透圧調節機構をしらべる手がかりを得る。
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