1992 Fiscal Year Annual Research Report
コノドントの混在群集から見たトリアス紀海水準変動認定の試み
Project/Area Number |
03640652
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Research Institution | TOKYO GAKUGEI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
猪郷 久治 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (70014818)
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Keywords | 鍋山層(ナベヤマソウ) / 炭酸塩岩 / ラミネート石灰岩 / コノドント / ペルム紀 / トリアス紀 / ジュラ紀 / 混在群集 |
Research Abstract |
栃木県葛生町には,中期ペルム系の鍋山層が分布する。鍋山層は主に炭酸塩岩から成り,海洋底に形成された海底火山上に堆積したものと考えられている。コノドントの混在群集は鍋山層最上位の唐沢石灰岩部層に挟在するラミネート石灰岩から多産する。今年度はラミネート石灰岩の産状を野外で追跡し混在群集の成因を明らかにする目的で調査研究を行った。その結果葛生町北方の宮本町吉沢石灰工業株式会社西山採石場では,唐沢石灰岩部層の最上部と中部ジュラ系の赤色ないし黒色頁岩の不整合がよく観察された。ラミネート石灰岩は,この不整合面下数メートル以下に分布し,唐沢石灰岩部層の中に不規則な形態で分布し,側方へ追跡すると次第に細く樹根状になり消滅する。ラミネート石灰岩から次の様なコノドントを得た。Epigondolella abneptis,Epigondolella mungoensis,Gladigondolella tethydis,Neogondolella agea,Neogondolella polygnathiformis,Cypridodella mediocris,Enantiognathus ziegleri,Neospathodus homeri,Neospathodus timorensis,Dip Lognathodus Lanceolatus,Dip Lognathodus nodosus,Anchignathodus minutus。これらのコノドントの混在群集の示す地貭時代はペルム紀中期,トリアス紀前期スキチアンからトリアス期後期J-リアンにわたっている。またラミネート石灰岩からは,ジュラ紀を示す放散虫化石が産しない事から唐沢石灰岩上部を切る不整合が形成される以前に堆積したものと考えられ,野外観察の事実とも良く一致する。トリアス紀最後期に海水準の降下が最大に達し,ペルム系の鍋山層に出来た,海底洞窟や割れ目に海水に洗い出されたトリアス紀コノドントが石灰貭の泥とともに堆積した。ラミネート石灰岩は特徴的にラミナが発達するが,この成因として堆積物を供給する流れが考えられる。それは雨季の様な気候のサイクリックな変化によると考えられる。
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