1991 Fiscal Year Annual Research Report
二足性を獲得した周防猿まわしサルの生体維持機構の追跡調査
Project/Area Number |
03640683
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
葉山 杉夫 関西医科大学, 医学部, 助教授 (70025360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中務 真人 大阪医科大学, 医学部, 助手 (00227828)
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Keywords | 周防猿まわしサル / 二足性適応体制 / 脊柱代償性弯曲 / 腰椎前弯 |
Research Abstract |
二足起立姿勢をとらせたニホンザルに対するX線写真撮影の結果、猿まわしの調教を受けたサルの脊柱にはヒト的な特徴である腰椎前弯が発生していることが判明した。ニホンザルをはじめヒト以外のほとんどの霊長類の脊柱には胸腰部を通じ後弯しか存在しない。四肢性歩行者である彼らの胸腰椎は腹側に凸な曲げモ-メントに耐える構造になっている。一方、調教ザルに認められた腰椎前弯の機能的意義は二足起立時に、1)腰椎に発生する曲げモ-メントを減少せれる、2)体幹を起立させる国有背筋のテコ比を高め、効率的な筋活動を可能にする、3)体の重心を背側方向に移動させ、体重を支える後肢の負担を軽減させる、ことにあると考えられる。 さらに、腰椎前弯の発達度と、調教期間、調教方法との関係について検討した。一般に、調教期間が長いサル(3年以上)は、短いサル(約1年未満)よりも顕著な弯曲を示す。また前者では四肢性姿勢時でも腰椎前弯が認められるが、後者では弯曲は失われ、通常のニホンザルに近い状態を示す。しかしながら、調教期間の長い個体群についてみると、調教期間が必ずしも前弯度と相関していない。腰椎前弯の発達の程度には第一に調教期間、第二に個体が潜在的に持っている能力の程度が関係していると考えられる。三番目の要因として、二足歩行のための調教方法の違いが示された。調教の初期段階で二足起立姿勢を維持する訓練をうけたサルは、始めから立って歩く訓練をうけたサルに比べ、同程度の調教期間の経過後、より顕著な脊柱の代償性弯曲を示す。静的な二足起立状態を経験する過程で、調教ザルは体幹を前項させ下肢を深く屈曲させた姿勢から、体幹により直立させ下肢の伸屈度が高い姿勢をとるようになる。この段階で腰椎前弯は最もよく発達すると考えられる。このような安定的、より効果的な二足起立姿勢を獲得したニホンザルは、容易に安定した二足歩行をおこなうことが可能である。このことは、人類が二足歩行に移行する以前に、前適応として安定した二足姿勢の獲得があった可能性を示唆する。本来四肢性歩行者であるニホンザルに、ヒトと同じ機能適応を持った脊柱弯曲がこれほど顕著に発達した背景には、彼らも活動時間の非常に多くを体幹を直立させた状態で過ごすことが考えられる。脊柱に関するかぎり、多くの霊長類は二足性への前適応を持っている可能性があることが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] NAKATSUKASA M.,MAGAMI S.and HAYAMA S.: "Postcranial skeleton of bipedally trained monkey (Suosaruawashi)and implication for locomotor adaptation." Acta Anat japponica. 66. 318 (1991)
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[Publications] NAKATSUKASA M and HAYAMA S.: "Structural strennth of the femur of bipedal monkey." J Anthrop Soc Nippon. 99. 289-296 (1991)
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[Publications] NAKATSUKAS M.: "Monkey performance and morphology of bone:on influence on postcranial sheleton of japanese macaque by long term trained bipedalism." XIIIth CIPS abstract. 13. (1991)
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[Publications] HAYAMA S.,NAKATSUKASA M.and KUNIMATS Y.: "Monkey performance:the development of bipedalism in traind Japanese monkeys." Acta Anat Japponica. (1991)
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[Publications] NAKATSUKASA M.,HAYAMA S.and PREUSCHOFT H.: "Postcranial skeleton of bipedally trained monkey and implication for functional adaptation to bepedalism." in preparation. (1992)
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[Publications] 葉山 杉夫: "進化4.形態学からみた進化" 東京大学出版会, 28 (1991)
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[Publications] NAKATSUKASA M.: "PRIMATOLOGY TODAY" Elsevier science Publishers,Amsterdam, 2 (1991)