Research Abstract |
寒冷地における土壌の凍結現象は,これまで,凍害として見られていたが,近年この冷熱エネルギーを有効に活用することが試みられている.寒冷地においても,冬期冷熱をヒートパイプにより土壌に蓄え,低温貯蔵庫として活用するなど,冬期冷熱の有効利用が試みられており,その非定常状態での凍結・融解熱伝達特性を明らかにすることが重要な課題となっている.そこで,本研究では,昨年度まで基本的なモデルである固体粒子と氷からなる矩形多孔質層を左垂直面から融解させた場合の融解挙動および非定常融解熱伝達に及ぼす加熱面温度,粒子物性および粒子径の影響について,種々の粒子を用いて実験的検討を加えた. 本年度は,凍結した矩形多孔質層の融解挙動および融解熱伝達特性に関して数値解析を行い,水の密度逆転の影響を調べるとともに,昨年度までの実験結果との比較を行った.数値解析には,境界固定法を用いた.また,融解領域内の運動方程式には,ダルシー項ならびに速度の二乗に比例するForchheimer項を多孔質層による流動抵抗として取り入れた. その結果,本研究の範囲内で以下のことが明らかになった. 1.加熱壁面のヌセルト数の計算結果と実験結果との比較を行った結果,浸透率が大きく,加熱壁面温度が高い場合,ヌセルト数の計算結果は実験値に比べ大きな値を示すものの,計算結果は融解挙動およびヌセルト数の実験結果の傾向をよく表すことが知られた. 2.融解初期のヌセルト数は伝導解と一致し,融解過程は伝導伝熱で支配されるが,時間の経過とともに融解領域が増大し自然対流支配に遷移する.浸透率が大きい場合,ヌセルト数は,遷移の際に極小値を示す. 3.融解過程は,加熱壁面温度が大きいほど自然対流の影響を強く受ける.しかし,浸透率が大きい場合は,密度逆転の影響を受け,加熱面温度が8℃の場合に比べ4℃の場合が,ヌセルト数および溶解量は増大する。
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