Research Abstract |
高純度電解鉄製造の電解浴組成を公開特許公報によって調査し,若干の建浴試験も行ない,実験の基本浴組成を塩化物浴(FeCl_2 0.8mol/L,NH_4Cl 1.0mol/L,クエン酸0.01mol/L,pH4),硫酸塩浴(FeSO_4 0.8mol/L,(NH_4)_2SO_4 1.0mol/L,クエン酸0.01mol/L,pH4)と決定し,これら基本浴におけるイオン平衡と緩衝特性を計算した。その結果,基本浴においてはFe^<2+>が安定で,浴のpH緩衝容量が小さいことから,Fe電析時の陰極層pHは6.67まで上昇することが判明した。 次に,高純度電解鉄中での存在が確認されている不純物で,水溶液から電析可能でFeより貴な元素(Cu,Ni,Co,sn,Pb),水溶液から電析可能であるがFeより卑な元素(Cd,Zn,Mn,Cr,Mo,W),水溶液から電析しない元素(C,S,P,Si,Al,B,Ca,Mg,Ti),ガス成分(N,O,H,Cl)につき,基本浴本体(pH4)および陰極層(pH6.67)における不純物の形態と,Feの電析電位で生起可能な不純物の陰極反応を予測し,各不純物が仮定した3つの不純物混入機構の内のどの機構で混入するか推定した。 以上の準備の後,各基本浴から実際に高純度鉄を陽極として各種陰極板上にFeを電析させ,本実験に適正な陰極材質について検討した。その結果,電析Feを陰極から剥離する必要があるときはTi板が,そのまま溶解するときはAl板が最適であることが判明した。 次に,不純物を含有しない浴からのFe電析の分極曲線を測定し,Feの電析開始電位(見掛けの平衡電位)はCl^-イオンの存在,温度上昇により大きく影響されることを確認し,各電解条件における不純物の挙動を再整理した。 現在,各不純物を含有した浴からの電着実験が進行中である。
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