1991 Fiscal Year Annual Research Report
凝固組織制御による圧延ロ-ル用高クロム鋳鉄の耐摩耗性・靭性の改善
Project/Area Number |
03650550
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 実 東京大学, 工学部, 助手 (50167243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹羽 直毅 東京大学, 工学部, 助教授 (30011208)
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Keywords | 高クロム鋳鉄 / 圧延ロ-ル / 不安定化熱処理 / 炭火物 / 熱間摩耗 |
Research Abstract |
高クロム鋳鉄が耐摩耗性に優れ、鉄鋼圧延ロ-ルとして使われるようになってきた。圧延ロ-ルは耐摩耗性とともに機械的性質、靭性などの強度も要求される。そこで高クロム鋳鉄の基地組織、炭化物の種類、量、形態を定量化し、基地組織の変態挙動に及ぼす合金組成、凝固条件、熱処理条件などの影響を調べた。 高クロム鋳鉄は炭素、クロム量の増加により共晶炭化物量が増加する、基地組織と炭化物の種類はCr/C比、不安定化熱処理温度、冷却速度等に依存することが明かとなった。本鋳鉄の摩耗特性をさらに向上させるために、機械特性、摩耗特性等の良いCr/C値を選び、Mo量を1〜10%と変化させた。その結果、凝固組織はγ+M_7C_3型炭化物と微細でかつ硬いMo_2C炭化物が晶出し、Mo添加量の増加に従ってMo_2C炭化物の量が増加し、熱間摩耗特性も向上し摩耗量は90mg〜31mgと減少した。摩耗試験後のSEMによる組織観察では、モリブデンの多い試料では炭化物が多く、マトリックスのアブレ-ジョン摩耗が減少し、Mo2C炭化物が残存し、クロム炭化物に亀裂が生じていた。しかし、機械的試験ではモリブデン量の増加に伴って引張強度が減少した。これらの結果より、モリブデンの添加においてこのMo_2C炭化物が耐摩耗性の向上に寄与することが明かとなった。 示差熱分析装置、熱膨張計を用いて熱処理過程を調査した。示差熱分析では初晶γとγ+M_7C_3の共晶およびγ+M_2Cの共晶が観察出来た。初晶γは高Moで可なり高い温度で晶出していた。また熱膨張計によりCCT曲線を調査した結果、Ms点が5〜7%Moにて上がり10%Moでは下がった等の結果が得られた。 以上より、Mo添加が摩耗性向上に寄与しているが、引張強度の減少など欠点あり、炭化物に注目しこれらの炭化物の種類、析出状態、分布、性質等を今後調査しさらに検討を加える。
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