1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03650570
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠原 正 東京大学, 工学部, 講師 (70187376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻川 茂男 東京大学, 工学部, 教授 (20011166)
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Keywords | 透明導電性薄膜 / ITO(Indrum Tin Oxide) / 半導体電極 / 酸化物半導体電極 |
Research Abstract |
透明導電性薄膜であるITO(Indium Tin Oxide)は、電子ディバイスの透明電極としてだけでなく、ガラス/ITO/Ag膜/ITO/ガラスの構成で自動車のリアウインドウあるいは寒冷地の窓ガラスとして使われている。ここでは、それらが実際に使用される中性塩化物環境を考慮し、主にNaCl水溶液中でのITOおよびITO/Ag対の耐食性を調べた。ITOの分極曲線を0.01N H_2SO_4、0.3〜25%NaClおよび0.01N NaOH水溶液中、脱気・非脱気、光照射の有・無の条件下で測定した。0.01N H_2SO_4中では短時間の内にITOが溶解した。NaCl水溶液中での分極曲線はNaCl濃度による差がなかった。アノ-ド枝は光照射の有無だけに依存し、光強度が強いほど大きく、また飽和電流が見られ、ITOがn型半導体であることを示した。分極曲線測定後の観察では、ITOが劣化した形跡は見られなかった。一方、カソ-ド枝は溶存酸素濃度および照射光の強度に依存し、溶存酸素濃度が高いほど、照射光が強いほど大きい。また、NaOH水溶液中での分極曲線はNaCl水溶液中でのものと差がなかった。NaCl水溶液中でのAgの分極曲線浸はNaCl濃度に依存し、浸漬電位はNaCl濃度が高くなるほど卑になった。ITOとAgの分極曲線を比較すると、ITOのカソ-ドとAgのアノ-ド枝が交わり、ITOがカソ-ドにAgがアノ-ドになって、Agが腐食する可能性を示唆した。そこで、ITOとAg板をガルバニックカップルを作り、両者を流れる腐食電流を測定したところ、ITOがカソ-ドにAgがアノ-ドになった。腐食電流はNaCl濃度が高いほど、溶存酸素濃度が高いほど、あるいは光照射の強度が強いほど大きく、1nA/cm^2から1μA/cm^2の間で変化した。これらは、構造材料では耐食性有りとして採用できる値であるが、厚さ数十〜百数十nmのAg膜では数日〜数カ月のうちにAg溶解しきる腐食速度となる。こうした中、低NaCl濃度、光照射、脱気条件下では、Agがカソ-ドにITOがアノ-ドになり、ITOによってAgをカソ-ド防食できる可能性があることがわかった。
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