1991 Fiscal Year Annual Research Report
イオン結合性結晶の電子伝導の新機構解明と同機構の高機能コンデンサ-開発への応用
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03650573
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
井口 栄資 横浜国立大学, 工学部, 教授 (60017960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 瞭 横浜国立大学, 工学部, 助手 (40107371)
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Keywords | ポ-ラロン / ペロヴスカイト構造 / ホッピング・エネルギ- / 誘電正接 / 比誘電率 / 直流伝導率 / SrMnO_3 / 境界層BLコンデンサ- |
Research Abstract |
本来絶縁体であるイオン結合性の強い酸化物は、不純物添加により電気伝導担体が導入されると伝導性が高まり、半導体化する。導入された担体はイオン結合結晶では、伝導電子や価電子帯中の正孔ではなく、電子ーフォノン相互作用によって周囲のイオンの局所格子歪場を伴った、陽イオンに局在した電子である場合が多い。この局在電子と局所格子歪場の結合体が、ポ-ラロンである。ポ-ラロンが担体である場合、電気伝導は局所歪場を掃引したポ-ラロンの陽イオン間のホッピングによって生ずる。従って、ポ-ラロンの有効質量は電子の静止質量の100倍以上の場合が多い。即ち、ポ-ラロンはイオンより軽いが電子よりは重い。従って、印加された交番電場により分極し、非常に大きな双極子モ-メントが期待でき、理論的には高誘電率を誘引するはずである。 本研究は以上の理論的背景により高誘電率、高絶縁性を持つ高機能コンデンサ-の開発を目標にしており、Srー系ペロヴスカイト結晶の半導体化及びそれに伴う高誘電率化を第一の目的としている。高絶縁化は結晶粒境界層絶縁化法(BLーCapacitor)の開発による行う。 今年度の研究では、SrMnO_3に対するLa添加により金属には匹敵する非常に高い伝導性を持つセラミックスを作成することにより成功した。そして当然の事であるが、これらの試料の誘電率はイオンの分極に基づく誘電率に比較すると著しく高い。伝導度はLaの添加量に依存するが、その添加量が20〜30mol%が伝導度が最も高くなるが、しかし、添加量の増加に伴い結晶構造がペロヴスカイトからずれ、第二、第三相が現れ複雑になる。 又、極低温から室温までの誘電率の温度特性の研究で誘電緩和に基づく明確な吸収ピ-クが確認できたが、これが、ポ-ラロンのホッピングの動力学を直接表している挙動か否かは未だ確認されていない。次年度以降は、試料の絶縁化と同時にこれらの問題を解決していく予定である。
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