1992 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体における混合配位の制御による常磁性両親媒性化合物の機能設計
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03650690
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Research Institution | University of Tokyo, |
Principal Investigator |
八代 盛夫 東京大学, 工学部, 講師 (30192785)
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Keywords | 両親媒性化合物 / 遷移金属錯体 / 混合配位錯体 / ミセル / 表面張力低下能 / ソルバトクロミズム |
Research Abstract |
1.長鎖アルキルポリアミンおよび長鎖アルキ置換edta型配位子のニッケル(II)錯体を合成して水溶液における界面化学的挙動を検討したところ、ミセル集合体形成を示す特徴的な挙動が認められ、すでに合成した類似の長鎖化合物を配位子とするコバルト(III)錯体に匹敵する界面活性能を示すことが明らかとなった。さらに、N-ドデシルエチレンジアミンおよび6-ドデシル-2,3,2-テトラミン(5-ドデシル-3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン)を用いて、種々の両親媒性構造の長鎖コバルト(III)錯体錯体を合成し、水溶液中における集合体形成を検討した結果、対イオンが、長鎖アルキルの置換の位置によってcmcおよびγ_<cmc>が劇的に変化することを明らかにした。これは、錯体部分の界面における配列によってアルキル鎖の配向に違いが生じるために、溶液の表面張力に影響するものと考えられる。 2.八面体構造のキラリティーが集合挙動に及ぼす効果を初めて明らかした。光学活性体とラセミ体とでは、界面吸着におけるパッキングが異なり、表面張力の低下に異なった寄与をしているためと考えられる。八面体構造のキラリティーが集合体の形態等にもさまざまな効果を及ぼすことが期待できる。 3.長鎖アルキル置換テトラミン-ニッケル(II)錯体については、溶液中において、常磁性6配位構造と反磁性4配位構造との平衡が生じ、サーモクロミズムおよびソルバトクロミズムが観測された。従って、人為的な環境条件(溶媒極性、温度、pH、無機塩類の添加など)の変化により、配位子の解離平衡を制御することで、錯体の構造や、磁性などの物性、それによって表面活性能、可溶化量、触媒活性や選択性、集合挙動などを変化させ、制御することが期待できる。 以上の様に本研究において、新しいタイプの両親媒構造の混合配位型長鎖金属錯体を合成し、それが水系や非水系において集合体を形成しうることを明らかにした。また、分子構造の設計により多彩な構造の長鎖錯体を作り分けることができ、錯体の構造に依在して表面張力低下能が大きく変化することが明らかとなった。従って、このような錯体系は多様な集合体形態を作る上できわめて有用であると考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] M.Yashiro,K.Matsumoto,and S.Yoshikawa: "First Evidencc of the Effect of Chirality around the Octahedral Metal Center on the Aggregation Behavior of an Amphiphilic Co(III) Complex" Chem.Lett.1429-1432 (1992)
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[Publications] M.Yashiro,K.Matsumoto,N.Seki,and S.Yoshikawa: "Preparation of Cobalt(III) and Nickel(II) Complexes Having an Alkyl Long Chain and Thcir Surface Tension Reducing Abilities" Bull.Chem.Soc.Jpn.66. (1993)