1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03650721
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
木下 隆利 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (60135407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻田 義治 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (70016591)
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Keywords | 細胞間情報伝達 / ギャップ結合モデル / 両親媒性ポリペプチド / 単分子膜反応法 / 脂質二分子膜ベシクル / ベシクル接着 / ベシクル間物質移動 / ベシクル認識 |
Research Abstract |
昨年度、細胞間情報伝達を担うギャップ結合蛋白質のモデル分子として、2つの両親媒性ヘリックスが連結されたポリプペチド(am.-MPrM)の調製に成功した。そこで本年度は“情報伝達=化学物質の輸送"の認識に基づき、am.-MPrMによるベシクル間物質輸送を検討した。 まず、ポリペプチドam-MPrMをジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)二分子膜ベシクル系に導入して得たCDスペクトルより、同二分子膜中でMPrMの両親媒性ヘリックスが逆ミセル状に会合していることを確認した。一方am.-MPrMを含んだDPPC二分子膜ベシクルのゲルフィルトレーションクロマトグラフには、純DPPCベシクルには見られない新たなピークが現れ、ベシクルサイズの増加、即ちam.-MPrMによりDPPCベシクルの接着が生じることも確かめた。これらの結果に基づいて、am-MPrMのベシクル間の物質輸送に対する有効性を評価した。具体的には、ベシクル内水相にD_2Oおよびテルビウムイオン-H_2Oを有する二種類のベシクルI、IIをそれぞれ調製し、両者をH_2Oからなる水溶液IIIに混合した後、am.-MPrMを添加した。ここでテルビウムイオンはH_2O中では蛍光性は低いが、媒性をD_2Oに置換すると蛍光が著しく増加することが知られている。水溶液IIIの蛍光強度は、ベシクルIIのみを含む水溶液のそれと等しく経時変化はなかったが、am.-MPrMの添加により、その蛍光強度は著しく増加した。テルビウムイオンはその水和半径が大きく、am.-MPrMが形成するチャネルを透過しないことが確かめられているので、この蛍光強度の増加は、ベシクルIからベシクルIIへD_2Oが移動したことを裏付けた。つまり、am.-MPrMの二つの両親媒性ヘリックス分子が、同時に異なるベシクル二分子膜に取り込まれてチャネルを形成し、両ベシクル間の直接的な物質輸送を可能にしたのである。今後は標的ベシクルへの特定物質の輸送を念頭に、本系に対するベシクル認識能の付与が望まれる。
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[Publications] M.Higuchi,T.Kinoshita,A,Takizawa,Y.Tsujita,K.Okouchi,N.Hattori: "Interaction between an Anionic Sequential Polypeptide and Anionic Bilayer Membrane" Polymer Journal. 23. 15-22 (1991)
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[Publications] 木下 隆利: "単分子膜反応法によるポリマーへの官能基の定序的導入" 表面. 29. 815-824 (1991)
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[Publications] T.Kinoshita,M.Huguchi,A.Takizawa,Y.Tsijita: "Inter-vesicular Transport by a Synthetic Channel Peptide Consisting of Two Amphiphilic Helices" Rept.Prog.Polym.Phys.,Japan. 35. 555-558 (1992)
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[Publications] T.Kinoshita,M.Higuchi,A.Takizawa,Y.Tsujita: "Inter-vesicular Communications by a Synthetic Amphiphilic Polypeptide" Chem.Lett.,. 431-434 (1993)
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[Publications] 木下 隆利: "光応答性人工脂質の調整と機能" 染料と薬品. 37. 28-38 (1993)