1991 Fiscal Year Annual Research Report
時分割小角光散乱法による単繊維への低分子拡散過程の追跡
Project/Area Number |
03650726
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
福田 光完 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (40183587)
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Keywords | CaseII拡散 / ガラス状高分子 / 高筒体に対する光散乱 |
Research Abstract |
当初の計画通り、本年度では測定装置の組み立てを完成させ、2種類のガラス状高分子繊維、ポリスチレン繊維とポリメチルメタクリレ-ト繊維(PMMA繊維)に対する有機溶媒の拡散挙動を詳しく検討した。 装置としてはまず繊維断面の微小切片を作成するためにミクロト-ムを購入し、繊維断面の形状を調べ円筒体に対する光散乱理論が適応できることを確認した。光散乱強度の時間変化を迅速に捕らえ解析するため、既存の動画像処理装置に大容量のハ-ドディスクを取り付けた。これによりデ-タ保存を瞬時に行えるようにした。次に有機溶媒蒸気圧、および温度を制御できる光散貼用の石英ガラスセルを完成させた。このガラスセルを用いて、CaseII拡散が期待できる2、3の有機溶媒の拡散挙動の蒸気圧変化による拡散速度の違いを予備的に検討した。その結果、どちらの繊維に対しても測定上アセトンが最適であることが判明したため、以降の実験はアセトンを用いて飽和蒸気圧付近で集中的に実験を行った。直径25μmのポリスチレン繊維を用いた場合、20℃でほぼ8分後に拡散は完了する。しかし散乱パタ-ンの変化は、拡散終了のすぐ前の1分内に劇的で起こった。一方、直径50μmのPMMA繊維の場合も、30分程度で拡散は終了するが、散乱パタ-ンの急激な変化は、終了前の2分以内である。この急激な散乱パタ-ンの方化はcaseII拡散から予想されるように、屈折率が繊維内部で段階的に変化する同軸二重円筒体の理論散乱パタ-ンであり、溶媒蒸気の拡散により繊維が溶媒がまだ浸透していないコアと溶媒が浸透して平衡状態となっているシェルを明確に分けていることを示した。実験散乱強度分布を理論散乱曲線にフィットすることにより、拡散溶媒の進行する速度と時間との関係を求めた。これらの結果より、CaseII拡散は、拡散の終了間際に現れ、決して拡散開始後すぐに観察されないことが明かとなった。
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Research Products
(1 results)