1992 Fiscal Year Annual Research Report
時分割小角光散乱法による単繊維への低分子拡散過程の追跡
Project/Area Number |
03650726
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Research Institution | HYOGO UNIVERSITY OF TEACHER EDUCATION |
Principal Investigator |
福田 光完 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (40183587)
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Keywords | Case II拡散 / 円筒体に対する光散乱 / ガラス状高分子 |
Research Abstract |
平成4年度では、先年度に引き続きポリスチレン繊維に対するアセトン蒸気の拡散挙動をさらに詳しく検討した。まず、一般的な拡散挙動の測定法としてよく知られる収着バネ秤法を用いて、CaseII拡散が出現する蒸気圧およびその時の繊維の形態変化を観察した。ポリスチレン繊維を60℃で16時間熱処理したものを試料とした。気体収着装置は既存のものを利用した。繊維がアセトン蒸気を吸収することによる重量変化を時間とともに測定した。蒸気圧を変化させて吸収曲線を描くと、ガラス状高分子と有機溶媒系によく表れる異常拡散と類似の曲線を得た。一方、相対蒸気圧0.70以下では繊維の形態変化は観察されないが、相対蒸気圧0.75以上では収着の最終地点の手前で収縮現象が観察された。繊維の収縮の割合は蒸気圧が高いほど大きく、脱着過程においてもその形状を保持するという不可逆的なものであることが判明した。例えば相対蒸気圧0.92では、元の繊維の1/3の長さに収縮した。この収縮現象をさらに詳しく調べるため、先年度製作した光散乱用ガラスセルを光学顕微鏡に取付け、単繊維のアセトン蒸気吸収による変化を観察した。飽和蒸気圧付近では、顕微鏡でも進行する鋭い境界線明らかに確認された。この境界線が繊維の中心に達した瞬間から繊維の収縮が始まることが明らかになった。この結果は、CaseII拡散の本質を知る上に極めて重要な結果であると思われる。また、繊維の熱処理の状態が拡散速度に非常に重要であることも判明した。 本年度ではさらにCaseII拡散以外に、一般のフィック型拡散に対しても光散乱法が適用可能な系の探索をした。ゴム状高分子として、ポリウレタン繊維を検討したが、拡散溶媒の選択が難しく、むしろナイロン6等の溶融紡糸による繊維の方が、繊維が均質であり、水やメタノールの拡散が測定可能であると思われた。
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Research Products
(1 results)