1992 Fiscal Year Annual Research Report
作物の生育・生産に対するUV-A及びUV-Bの作用特性に関する研究
Project/Area Number |
03660016
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
玉井 富士雄 東京農業大学, 農学部, 講師 (40078176)
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Keywords | UV-A / UV-B / 生育 / 生産 / 葉の組織構造 / 光合成 |
Research Abstract |
UV‐A及びUV‐Bが、作物の生育・生産に及ぼす影響について考究した。UV‐Aは、作物体の外観上からは、UV‐Bのように生育に対する抑制作用は見受けられなかった。これに対し、より波長の短いUV‐B域の紫外線は生育に対する抑制作用が大きく、その強度が増すと共に抑制作用が大きくなることが認められた。この抑制作用は、作物の種類によりその程度が異なり、ことにイネ科作物のトウモロコシ、オオムギ、コムギ、水稲は、インゲン、ダイズに比べ抑制作用が小さいことが認められた。この原因としては、双子葉、単子葉植物の葉の組織構造や受光態勢の相違が考えられる。生育抑制に対する防御反応として、葉の厚さに対する表皮の厚さの比率を大きくする場合と、柵状組織が厚くなる場合とが観察されたが、この点に関しては細胞の微細構造も含めて今後さらに追究したい。吸水させた種子に対するUV‐B照射により、ナスの発芽が促進された。光合成に及ぼすUV‐Bの作用性も、概して生育抑制作用が大きくなると、その能力が低下する傾向が認められた。自然光中のUVを透過するものとカットするビニールフィルムを用いた試験では、生育はカットにより助長されたが、光合成に関しては、UVが存在する方が高く、必ずしもUVが光合成の阻害要因ではないことが示唆された。オゾン層の破壊によるUV‐B放射強度の増加を想定して、強度を変化させてコムギの生育、生産に及ぼす影響を検討した結果、自然状態では生育後期の葉の枯れ上がりが大きいのにたいし、放射強度が大きくなるとむしろ生葉が保持されて収量が高められ、また、粒の蛋白質含有率も対照区の9.7%に対し15〜16%に高められ、収穫物の品質まで作用が及ぶことが認められた。UVの防御反応について、動物では亜鉛の効果が報告されており、水稲について施与を試みたが、明確な結果は得られなかった。 UVと作物の生育・生産について、今後ともさらに作物栽培の立場から検討を続けたい。
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