1992 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫フェロモンの害虫防除への利用の拡大と効率化:行動学的アプローチ
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03660040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田付 貞洋 東京大学, 農学部, 助教授 (40163480)
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Keywords | フェロモン / 交信撹乱 / IPM / (Z)-9-ヘキサデセナール / タバコガ / Heliothis |
Research Abstract |
1.交信撹乱処理ハウスでのタバコガ成虫の行動におよぼす影響 実験ハウスにおける交信撹乱処理下で成虫の行動を観察したところ、撹乱剤の組成によってオスの行動におよぼす影響が異なった。性フェロモン主成分単独ではオスの性フェロモンに対する反応性の著しい低下に加えて、一般的な活動も抑制された。必須2成分のブレンドでは活動性の低下はみられず、反応性の低下の度合いも低かった。さらに、高濃度のフェロモンを放出する撹乱剤に対しても定位・接近する異常行動が観察され、交信撹乱効果にかかわる新事実として注目している。なお、以上から、撹乱剤には当面、主成分を単独で用いることにした。 2.室内におけるタバコガ成虫の配偶行動の発現制御要因 交信撹乱の機構を探索するため、基礎となる室内での成虫の配偶行動に影響する要因を検討した。 (1)合成フェロモンに対するオスの行動反応性に影響する諸要因 室内風洞を用いて検討し、羽化後の日令は反応性に大きくは影響しないこと、明暗条件下では時刻の影響が顕著に現われ、暗期開始から3〜5時間後に反応のピークがみられることがわかった。 (2)メスのフェロモン生産と放出に影響する諸要因 交信撹乱処理はメスの性フェロモン放出行動にも影響するので、フェロモンの生産と放出に影響する諸要因を検討した。オスの反応性と同様に日令と時刻は両者に大きく影響した。明暗条件下では両者の変動パターンはほぼ一致し、恒暗条件でも共に周期性が維持されたので、両者が概日系の支配を受けることが示された。明条件は放出を抑制したが、フェロモン生産は影響されないか、または増強されることが示唆された。また、フェロモン生産を促進する脳ホルモンの存在を明らかにした。
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