1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03660046
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高木 正見 九州大学, 農学部, 助手 (20175425)
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Keywords | 伝統的生物的防除 / ヤノネカイガラムシ / ヤノネキイロコバチ / ヤノネツヤコバチ / 共寄生 |
Research Abstract |
ヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチをそれぞれ単独で放飼したミカン園では、引き続きヤノネカイガラムシ密度は低密度で経過した。また、単独放飼したそれぞれの園にも、他方の種が周囲から侵入し、2種が共存した状態になっている。しかし、いずれの園でも、ヤノネツヤコバチの方が優勢である。即ち、初めにヤノネツヤコバチを放飼した園では、ヤノネキイロコバチが侵入してから数年経過したにもかかわらず、まれにしかヤノネキイロコバチが観察されず、一方、初めにヤノネキイロコバチを放飼した園では、ヤノネツヤコバチの方が逆転して優勢になった。 この様な2種の種間関係を解析するため行った室内実験から、2種ともに未成熟成虫に対して産卵する事が明らかになった。このことから、ヤノネカイガラムシ未成熟成虫に対する2種の共寄生の可能性が示唆された。そこで、それぞれ一方の種が既寄生である寄主をそれぞれの寄生蜂が識別するか否についての実験を行った。その結果、他方の寄生蜂が産卵して30分以内であれば、2種の寄生蜂とも識別せずに産卵することが明らかになった。また、このように2種が30分以内の時間間隔で共寄生した場合、ヤノネキイロコバチの方が同一寄主をめぐる競争に勝つことも明らかになった。 これまで、2種の共寄生についてあまり調べられていなかったが、室内実験の結果から、ヤノネカイガラムシ野外個体群における共寄生の実態も調べてみる必要が生じた。そこで、野外における共寄生の実態を調べたところ、共寄生は野外でも生じているが、その率は低いことが明らかになった。同一寄主齢期を利用する2種の寄生蜂の共寄生率がそれほど高くない理由については、今後研究していく必要がある。
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