1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03660046
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高木 正見 九州大学, 農学部, 助手 (20175425)
|
Keywords | 生物的防除 / ヤノネカイガラムシ / ヤノネキイロコバチ / ヤノネツヤコバチ / 共寄生 / 種間競争 |
Research Abstract |
従来、ヤノネカイガラムシの生物的防除の目的でわが国に導入された2種の寄生蜂、ヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチは、それぞれが寄生する寄主の齢期が異なるので、共寄生の可能性は少ないと思われていた。ところが、平成3年度の研究において、室内で実験的に寄主として未成熟雌成虫を与えたところ、容易に共寄生が生じた。しかし、ヤノネカイガラムシが低密度に維持されている野外個体群について、2種の共寄生を調べたところ、その率はあまり高くなかった。 そこで、平成3年度にとられた野外データについて、本年度に設置した32ビットパーソナルコンピューターを用いて分析した。その結果、共寄生率が低かったのは、1つには、ヤノネキイロコバチの寄生率自体が低いことに起因していた。調査を継続している圃場のようにヤノネカイガラムシが低密度に維持されているミカン園では、未成熟雌成虫が出現する時期が限定されており、未成熟雌成虫を主な寄主資源としているヤノネキイロコバチが、安定して個体群を保つことが困難である。従って、何らかの原因でヤノネカイガラムシの密度が高くなり、未成熟成虫が継続して存在するような状態になったミカン園以外では、ヤノネツヤコバチが優勢であり、ヤノネキイロコバチとの共寄生がヤノネツヤコバチの働きに影響を与えるほどヤノネキイロコバチの密度が高くなることは少ないと思われた。 一方、平成3年度の共寄生の実験では、2種の蜂の産卵間隔は30分以内であった。従って、先に産卵させた蜂の発育ステージは卵であった。今年度は、さらに、先に産卵させた蜂の発育ステージが幼虫の場合について実験を行ったところ、両種とも産卵を回避し、共寄生は避けられた。2種の蜂の攻撃間隔の開きも共寄生が野外ではあまり見られない一因であると考えられる。
|