Research Abstract |
『85年農業センサス』・『中四国の農地の概況』等から農業に関する25項目を選び,主成分分析およびクラスタ-分析を適用して,高知県内の農業地帯を類型化した.まず,主成分分析により,「施設園芸・農業活力」,「水田経営」,「傾斜地小規模経営」,「樹園地・不安定兼業の4つの主成分が得られた.次に,クラスタ-分析を行った結果,次の5つの類型を得た。第1類型は,『水田中規模型』で,高知市と県西部に分布する.第2類型は,農業活力のある『施設園芸大規模型』で,安芸市・土佐市等の施設園芸地帯を中心に分布する.第3類型は,施設園芸と稲作経営の『中規模複合型』で,南国市・須崎市等の高知市近郊に分布する.第4類型は,『傾斜地小規模型』で,平坦部から山間部に移る傾斜地域に分布する.第5類型は,農業の生産性がきわめて低い『農業衰退型』で,嶺北を中心に分布する.さらに,こうした地帯区分を地形,気象,土壌環境条件等と比較分析するための第1歩として,前述の第2類型に属する香美郡香我美町のハウスおよび露地の柑橘栽培圃場を対象に,土壌中での養水分の動態について検討した.その結果,(1)露地表層土のpFは降雨と密接な関係にあること,ハウス内は全般的に乾燥状態にあるが下層土には有効水が存在すること,(2)ハウス土壌ではECが露地よりも高く,土壌溶液中のNa^+,K^+,Ca^<2+>,Mg^<2+>,Cl^-,SO_<4 >^<2->濃度が,露地よりも10倍程度高いこと,(3)ハウス表層土では有効態リン酸の集積が顕著に認められるが,土壌溶液中の溶存量はわずかであること,(4)露地表層土の交換性Mg含量は低く,柑橘に対して欠乏領域にあること,(5)露地の一部にはCu含量が高くボルド-液の使用歴が推察される圃場のあること,などが明らかになった. 今後,調査地点を拡大することで,土壌条件などの自然環境が,地域農業の多様性をいかに大きく規定しているか判明するものと考えられた.
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