1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03660208
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Research Institution | Tokyo University of Fisheries |
Principal Investigator |
林 哲仁 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (00173013)
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Keywords | 変異原性 / エキス / 加工食品 / ハロゲン化化合物 / クロロヒドリン / 塩酸加水分解 / MCP / HAP |
Research Abstract |
市販調味料であるエキス(83種)を収集し化学分析を行なったところ、変異原性を有するモノクロロヒドリンのMCPが5-219μg/kg(平均45.0,標準偏差46.4μg/kg)検出された。抽出法としてはエキストレルートカラムが最も優れていたが、ジエチルエーテルを用いる場合には取い扱い説明書記載の4倍量以上を流す必要のあることを確かめた。ECD-GCによる検索では、DCPなどの関連化合物はすべて検出限界(0.1μg/kg)以下であった。なお、製造法別に検討したところ、煮汁エキス、自己消化エキス、酵素分解エキスなどからMCPは全く検出されず、塩酸加水分解エキスのみに分布することを知った。しかし、ゼラチンのように脂質を全く含まない原料を、工場規模で同様に加水分解したところMCPは生じなかったので、中性脂質の主要構成成分であるトリアシルグリセリンが加水分解によりグリセリンを生じ、この水酸基の一部に塩素化反応が進行してMCPを生じるのではないかと推定された。 そこで、ほぼ純粋な蛋白質を反応の基質として用い、これに食肉相当の割合で脂質と水分を加えたモデル系を調製し、塩酸加水分解しMCPの生成量を調べた。その結果、中性脂質無添加モデルでは全く生成しなかったが、添加量が増えるにつれてほぼ一次関数的に増加したことから、グリセロール骨格を持つ中性脂質が、酸加水分解エキスにおけるMCP前駆体であることは、ほぼ間違いないと思われた。次に分解に用いる酸の濃度とMCP生成量との関係を調べたところ、塩酸1および3モルでは全く生成せず、通常の2倍の12モルでは生成量も倍増した。最後に各酸濃度でのタンパク分解率を調べたところ、1モルでは49%で実用化困難だが、3モルでは工業的に用いられる6モルと比べて6%低い程度で、十分採算ベースに乗る安全な製造条件であると考えられた。このほか、市販エキス中の変異原性の強さを微生物試験法で検討し、そのうちに占めるMCPの役割についても明らかにした。
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