1993 Fiscal Year Annual Research Report
御崎馬における近交防止機構に関する行動学的ならびに遺伝学的解析
Project/Area Number |
03660283
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
加世田 雄時朗 宮崎大学, 農学部, 助教授 (70041019)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 博之 宮崎大学, 農学部, 助教授 (30012016)
|
Keywords | 御崎馬 / 近親交配 / 血液型 |
Research Abstract |
本年度も、平成3年度から継続している現地調査を行なった。現地調査項目としては、個体別の年間を通じての社会行動や行動域の調査、個体別の出生と死亡、出産記録、2つの集団間の馬の移動調査、本年度生まれの全子馬の血液型の分析と父子判定など従来から行なっている調査を継続すると同時に、集団間の馬の移動は、秋から翌年の春に起こるので、この時期に群れや親からの馬の分離や他の群れへの加入の仕方などについて詳細に調査した。本年度は本研究の最終年度であるので、前年度までに整理集計した1972年以降のデータとその予備的分析を基に、データの総合的解析を行なった。その結果、1972年から続けている頭数動態調査と行動調査によって、野生状態の馬と同様の社会が形成されていること、すべての子馬が性成熟前に生来群(両親)から分離すること、及び御崎馬は大きく2つの集団に分かれており、両集団間で子馬が移動していることが明らかになった。一方、1980年から開始した個体別の血液型による親子判定の結果、1978年から1990年の間に生まれた158頭のうち、近親交配の例は、父娘交配が2例、母息子交配が1例、兄妹(姉弟)交配が10例であった。近親間のハーレム群形成は、父娘間で2例、兄妹(姉弟)間で3例認められたが、母息子間のハーレム群の形成は1例もなかった。特別の抑制機構がないと仮定するならば、父娘間では39組-118例、母息子間では8組-30例、兄妹(姉弟)間では69組-222例で交配が起こる可能性が想定されたが、いずれの組合せでも、交配相手が他の集団に移動したために、その交配の可能性は50%減少した。以上の結果から、御崎馬においては、子馬が性 成熟以前に生来のハーレム群から分離だけでなく、地理的、血縁的により遠い別の集団へ移動することによって、近親間の接触の機会が減少し、その結果として極端な近交が防止されていることが明らかになった。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 加世田雄時朗: "御崎馬における小松群と扇山群の頭数の変動要因" 日本畜産学会誌. 62. 1171-1178 (1991)
-
[Publications] 加世田雄時朗,小川博之: "御崎馬における近交防止機構"