1991 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス関連物質による生殖活動抑制機序:電気生理学的解析
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03660308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西原 真杉 東京大学, 農学部, 助教授 (90145673)
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Keywords | ストレス / 性腺刺激ホルモン放出ホルモン / 黄体形成ホルモン / パルス状分泌 / 多ニュ-ロン発射活動 / 腫瘍壊死因子ーα |
Research Abstract |
哺乳動物においてはストレスが生殖機能に対する大きな阻害要因となっているが、ストレス、生殖機能それぞれの多様性から、その阻害作用を客観的に評価し、作用機序を解明することは容易ではない。しかし、我々は最近、多ニュ-ロン発射活動(MUA)記録法を用いてパルス状黄体形成ホルモン(LH)分泌と同期して顕著に上昇する視床下部神経活動(MUA volley)を記録することに成功し、さらに、この神経活動が神経伝達物質阻害剤などに対し非常に明瞭な用量反応性を示すことなどから、生殖機能を評価する上で極めて有用なパラメ-タ-となることを見いだした。本年度の研究においては、多様なストレスの生体内における共通の中継物質となる生理活性物質として腫瘍壊死因子ーα(TNFーα)に着目し、そのMUA volley及びLH分泌に対する効果を検討し、ストレスによる生殖機能抑制機序を解明することを試みた。 ラットの視床下部に慢性的に記録電極を留置し、自勇行動下でMUAを記録するとともに採血を行ない、血中LHレベルを測定した。その結果、パルス状LH分泌と同期して15ー20分間隔で出現するMUA volleyが観察された。TNFーα(1μg)を静脈内に投与した場合、直後には2ー3個のMUA volleyが投与前と同様の間隔で出現したが、それ以後出現間隔は有意に延長した。また、側脳室にTNFーα(50ng)を投与した場合にも、ほぼ同様の結果が得られた。このようなMUA volleyの出現間隔の変化は、血中LHのパルスパタ-ンにも正確に反映された。これらの結果より、末梢及び中枢で産生されるTNFーαは視床下部神経活動を抑制しLHパルスの頻度を低下させることにより性腺機能を抑制することが示唆されたが、一方、TNFーαは血液脳関門を透過し難い物質であることから末梢と中枢のTNFーαは異なる過程でその作用が発現している可能性も考えられた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 西原 真杉: "視床下部神経活動のモニタ-法ーGnRH分泌に伴う神経活動の変化ー" 日本内分泌学会誌雑. 68. 1-10 (1992)
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[Publications] T.Osada: "Sex differences in the basal firing rate and the responsiveness to opioid peptides of rat hippocampal neurons" Japanese Journal of Physiology. 41. 843-850 (1991)
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[Publications] M.Nishihara: "Interactions between the noradrenergic and opioid peptidergic systems in controlling the electrical activity of luteinizing hormoneーreleasing hormone pulse generator in ovariectomized rats" Neuroendocrinology. 54. 321-326 (1991)
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[Publications] Y.Mori: "Chronic recording of electrophysiological manifestation of the hypothalamic gonadotropinーreleasing hormone(GnRH)pulse generator activity in the goat" Neuroendocrinology. 53. 392-395 (1991)
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[Publications] F.Kimura: "Naloxone increases the frequency of the electrical activity of luteinizing hormone releasing hormone(GnRH)pulse generator in longーterm ovariectomized rats" Neuroendocrinology. 53. 97-102 (1991)
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[Publications] 西原 真杉: "内分泌リズムと視床下部電気活動" ホルモンと臨床. 39. 529-535 (1991)
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[Publications] M.Nishihara: "Brain Control of the Reproductive System" Ed.Akira Yokoyama,Springer Verlag, (1992)