1992 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウム・マグネシウムの腸管吸収機構と腸ミクロ環境pHの役割の解明
Project/Area Number |
03670040
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
星 猛 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (60004537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 久由 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助手 (40238118)
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Keywords | 腸管吸収 / カルシウム / マグネシウム / 細胞機序 / ミクロ環境pH / pH依存性解離 / 難溶性Ca塩 / モルモット小腸 |
Research Abstract |
腸管のカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)の吸収はイオンの形で行われるが、食品中のCa,Mgは何れも難溶性の塩の形で含まれている。この解離に対する胃酸の役割は否定的な成績が多く、腸内の特別な機構が重要と考えられるに至っている。本研究では小腸粘膜表層の低pH層の役割を明確にするため、まずin vitroでpH電極並びにCa^<2+>電極を用いて難溶性Ca塩の解離のpH依存性を小腸ミクロ環境のpH勾配に相当するpH範囲(7.4〜5.5)で調べ更に小腸内イオン環境に相当する150mM NaClの影響を観察した。難溶性のCaHPO_4は中性域では極めて解離度は低いがpH7.0〜5.5の範囲で1〜5mmoles/l懸濁液では略完全に解離しNaCl(150mM)はpH-解離度曲線を全般的に上方に移動せしめる(pH7.0で2倍,6.0で1.5倍)ことが明らかになった。CaCO_3もNaClが存在しない時は解離度はpH5.5まで極めて低いが、NaCl存在下ではPH8.0から6.0の間で低pH化と共に増大しpH6.0で5mmoles/l懸濁液は略完全に解離する。植物性Ca,Mg貯蔵型として代表的なフィチン又は6Ca-phytateもNaCl存在下でpH7.0からpH5.5の間で6倍解離度が上昇する。従って小腸ミクロ環境pHはこれら難解離性Ca塩の解離に極めて大きな役割を果していることが判明した。実際にモルモット小腸摘出反転嚢標本をこれら難溶性Ca塩の懸濁液に浸漬しDTTで粘膜表面のムチン層を削減した状態で150mM NaCl存在下で測定すると、メジウムpH7.4と比較し、pH6.0にするとCaHPO_4の場合は6倍、CaCO_3よりは2倍、6Ca-phytateの場合は4倍に上昇することが確かめられた。 以上の成績から小腸ミクロ環境低pHは難溶性Ca塩からのCa^<2+>吸収に本質的に重要な役割を演じていることが確認された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Hayashi,H.and Hoshi,T.: "Properties of active magnesium flux across the small intestine of the guinea pig" Jpn.J.Physiol.42. 561-575 (1992)
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[Publications] Hoshi,T.: "Proton secretion by the enterocytes and its role in intestinal absorptive functions" Advances in physiological Sciences(S.K.Manchanda,W.Selvamuthy,V.M.Kumar eds).McMillan India.64-70 (1992)
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[Publications] Hayashi,H.and Hoshi,T.: "Properties of active magnesium flux across the small intestine" Jpn.J.physiol.42(Sup). S89- (1992)
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[Publications] 林 久由,星 猛: "単離モルモット小腸上皮細胞におけるNa^+依存性Mg^<2+>effluxとその基本的性質" 消化と吸収(日本消化吸収学会誌). 15. 37-39 (1992)
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[Publications] 星 猛: "カルシウム栄養の問題点" Clinical Calcium. 2. 1624-1629 (1992)