1992 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類インビトロ胎仔の神経成長連続記録法を用いた特異的神経回路形成分子機構の解析
Project/Area Number |
03670053
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鈴江 俊彦 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (40143565)
|
Keywords | 神経回路網 / ラット / 胎仔 / 発生 / モノクローナル抗体 / 全胚培養 / 哺乳類 |
Research Abstract |
本年度は、申請者の開発した妊娠後期ラット胎仔in vitro経胎盤潅流法を、胎仔ニューロンの形態観察に応用する研究を進めた。前年度において、胎仔ニューロンを、順行性にラベルすること、すなわち蛍光色素DiIの結晶を、胎仔の脊髄、あるいは後根神経節に挿入し、in vitroで約15時間生存させると、運動ニューロン、知覚神経ニューロン、あるいは交感神経節前ニューロンを生きたまま、細胞体から神経末端まで明るく染色することが可能であることを明らかにすることが出来た。この成果を踏まえて、本年度は、さらに特定の胎仔ニューロンをラベルする方法の完成を目指して、ニューロンを逆行性にラベルする方法を試みた。経胎盤的に潅流したラット胎仔の肋間神経などの末梢神経の部分に、DiIの小結晶を挿入し、10-20時間潅流すると、末梢から取り込まれた色素が細胞体に移行し、後根神経節、運動ニューロン、また挿入部位によって、脊髄内の交感神経節前ニューロンの細胞体が蛍光ラベルされることが、明らかになった。また、経胎盤的に20時間程度潅流した胎仔から、大脳、中脳、脊髄、後根神経節を取り出して、単離培養を行ったところ、どの組織を用いても良好な培養を得ることが出来た。この両者を組み合わせて、逆行性にラベルした特定のニューロンを、培養することが可能になった。逆行性にラベルすることは、脊髄のほか、大脳、中脳等、中枢神経系のほとんどの部分で可能であることも明らかになったので、この方法は、これまで不可能であった胎仔の中枢神経系の多種類のニューロンを、それぞれ区別して培養できることを意味しており、画期的な方法であるといえる。従来、区別して培養することのできなかったニューロンを、培養下に識別できるようになることにより、神経回路網形成の機構の詳細な解析が進展することが期待される。
|
-
[Publications] Suzue,T.: "哺乳類エンブリオを子宮外で生存される方法ー全胚培養法の現在と将来." Biomedica. 8. 151-158 (1993)
-
[Publications] Suzue,T.: "Physiological activities of late-gestation rat fetuses in vitro." Neuroscience Research. 14. 145-157 (1992)
-
[Publications] Suzue,T.: "妊娠後期哺乳類胎仔in vitro潅流法の開発。特集:哺乳類の全胚培養法" 組織培養. 18. 109-114 (1992)
-
[Publications] Suzue,T.: "Retrograde staining of rat fetal neurons with fluorescent dyes." Neuroscience Research. Suppl.17. S161- (1992)
-
[Publications] Suzue,T.: "胎仔ニューロンの逆行性標識への経胎盤潅流法の応用" 第70回日本生理学会大会予稿集. (1993)
-
[Publications] Suzue,T.: "妊娠後期哺乳類胎仔をin vitroで生存させる方法の開発と発生生物学ヘの応用" 日本発生生物学会第25回大会発表要旨集. 134- (1992)
-
[Publications] Suzue,T.: "ブレインサイエンス最前線(分担)" 講談社サイエンティフィク社, (1993)