Research Abstract |
ネコ大脳皮質運動野における抑制の時空間パタ-ンが,CNQX及びAPV存在下のスライス標本において調べられ,以下の知見が得られた。 (1)Blcuculline及びPhaclofenにより,それぞれ選択的に阻害されるFast及びslow IPSP_sが皮質IIーVI層の錐体細胞に誘発された。(2)Fast IPSP_sは,記録している錐体細胞の細胞体が存在する層と同じ層を刺激した時,最大となり,より表層を刺激するに従って,その振幅が減少した。対照的に,slow IPSP_sは,第II層の刺激により,常に最大となり,より深層を刺激するに従って,その振幅が減少した。(3)刺激場所の表層への移動に伴う,fast IPSP_sの振幅の減少と関連して,立ち上がり時間の増加及び反転電位の過分極側への移動が常に見られた。(4)刺激場所を錐体細胞から水平方向に移動した時,fast IPSP_sは潜時が増加し,振幅が減少したが,立ち上がり時間には変化が認められなかった。Fast IPSPは800ー1200μmまでの側方の刺激により誘発された。(5)Fast IPSP_sを誘発すると考えられる抑制性介在細胞は皮質のすべての層に存在し,水平方向に走る軸索により,錐体細胞の尖頭樹状突起に対して,それぞれの層において,シナプス結合していると考えられる。(6)Slow IPSPにおける水平方向の広がりは非常に小さく、340ー680μm以下であった。Slow IPSPの立ち上がり時間は,第V層錐体細胞におけるものの方が,第II,III層のそれにおけるよりも大であった。Slow IPSPの反転のパタ-ンは非対称で,シナプス入力の空間的分散が示唆された。(7)第V層錐体細胞において,slow IPSPの立ち上がり時間は,膜電位過分極と伴に減少し,IPSPのlate portionが先に反転する傾向を示した。このことより,遠位のシナプスに対する入力が近位のそれに先行する可能性が示唆された。(8)以上,fast及びslow IPSP_sにおける時空間パタ-ンの相異により二種類の抑制性介在細胞の存在が示唆され,それぞれは異なる層分布を示し,水平及び垂直方向に走る軸索を持つと考えられた。
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