1992 Fiscal Year Annual Research Report
心筋収縮力におけるC-kinaseの役割についての研究
Project/Area Number |
03670087
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
服部 裕一 北海道大学, 医学部, 助教授 (50156361)
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Keywords | C-Kinase / Endothelin-1 / 陽性変力作用 / モルモット左心房 |
Research Abstract |
前年度までの研究により、モルモット左心房標本において、endothelin-1(ET-1)は10nM以上の濃度で投与後5分以内に最大に達する早期相と、投与後10分以降から発現し約60分から90分で最大に達する後期相からなる二峰性の陽性変力作用を示すこと、早期相は活動電位幅延長の間に流入するCa^<2+>によって惹起されること、そして後期相はC-Kinaseを持続的に活性化するphorbol esterや、C-Kinase阻害薬であるH-7およびstaurosporineの前処置により選択的に抑制されること、さらにET-1は[^3H]イノシトール・一リン酸の増加を濃度依存性に増加することが明らかにされた。今年度は、ET-1の後期陽性変力相の発現に、C-Kinaseの活性が関与しているかをさらに明確化していくために、phospholipid依存性でCa^<2+>によって活性化されるC-Kinaseのcytosolからparticulateへの移行度からET-1のC-Kinase活性能を測定した。モルモット左心房標本において、ET-1は20nMの濃度で投与2分後、cytosol内のC-Kinaseを減少させ、particulate内のC-Kinaseを増加させ、結果としてparticulate C-Kinase/cytosol C-Kinaseの比率を有意に増加した。しかしながら、このET-1によるC-Kinaseの活性の増加は一過性であり、投与後3分以降ではET-1非存在下での値と有意な差は認められなかった。C-Kinase阻害薬を、ET-1によるC-Kinase活性の増加が既に認められなくなった時点で投与しても、ET-1による後期陽性変力相の発現には影響を与えなかった。以上の結果は、イノシトールリン脂質代謝回転亢進により産生されたジアシルグリセロールがC-Kinaseを一過性に活性化させ、この活性化が何らかの情報伝達系と共に作用して、ET-1による後期の陽性変力作用を惹起することを示唆する。ET-1は、β‐受容体刺激の場合と同様に、休止後収縮を増強し、その陽性変力作用は低頻度刺激で顕著であった。また、後期変力相がryanodineにより強く抑制されることから、C-Kinase活性化は筋小胞体内のCa^<2+>移送能に関係していることが推測された。
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