1991 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期の進行、特にM期開始に対するプロテインキナ-ゼ阻害薬の作用
Project/Area Number |
03670093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 茂 東京大学, 医学部・(医), 助教授 (80126193)
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Keywords | 細胞周期 / cdc2キナ-ゼ / MPF / M期開始 / プロテインキナ-ゼ |
Research Abstract |
細胞分裂期の開始は、MPF(maturationーpromoting factor卵成熟促進因子)の活性化により誘起される。M期開始におけるプロテインキナ-ゼの役割とその特性を理解するため、無細胞系を用いて、MPFの活性化に対するプロテインキナ-ゼ阻害薬の効果を調べた。 アフリカツメガエル未受精卵より調製したMPF硫安画分を用いてcdc2キナ-ゼに対するK252a、K252b、KT5926、スタウロスポリンの阻害効果を調べると、それぞれ6,0.3,120及び0.9μMのIC_<50>で阻害効果がみられ、阻害の強さの順序は、K252b>スタウロスポリン>K252a>KT5926であった。MPF活性に対する阻害効果の順序も同様であった。この結果は、K252bがK252aに比べて、より強い阻害効果をもつことがcdc2キナ-ゼの際立った特性である、Aキナ-ゼ、Cキナ-ゼ、Gキナ-ゼ、ミオシン軽鎖キナ-ゼとは異なることを示す。 MPF硫安画分をATPγS存在下にインキュ-ベ-トすると、MPF活性化がおこり、MPF及びcdc2キナ-ゼの活性はそれぞれ4倍、2倍に増加した。インキュ-ベ-ションの過程でcdc2タンパク質の脱リン酸化と110kDaタンパク質(p110)のチオリン酸化がみられた。p110のチオリン酸化は著明であり、全タンパク質のチオリン酸化の70%以上を占めた。K252aは、cdc2キナ-ゼの活性増加及びp110のチオリン酸化をそれぞれ30及び60μMのIC_<50>で阻害し、K252bは6及び15μMのIC_<50>で阻害した。p110のチオリン酸化がcdc2キナ-ゼの活性増加とほぼ並行して阻害されることから、この結果は、p110のチオリン酸化によってcdc2キナ-ゼ及びMPFが活性化されることを強く示唆する。また、K252bの阻害効果が、K252aより強いことから、p110のチオリン酸化に与るプロテインキナ-ゼはcdc2キナ-ゼに類似した特性をもつことが示唆される。
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