1992 Fiscal Year Annual Research Report
分化誘導した巨核芽球細胞における情報変換酵素ホスホリパーゼの活性制御機構
Project/Area Number |
03670121
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
岡野 幸雄 岐阜大学, 医学部, 助教授 (10177066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂野 喜子 岐阜大学, 医学部, 助手 (50116852)
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Keywords | ジアシルグリセロール / ホスホリパーゼCν / イノシトールトリスリン酸 / チロシンキナーゼ / 肝細胞増殖因子(HGF) / HepG2細胞 |
Research Abstract |
1.トロンビン刺激したヒト巨核芽球CMK細胞のDGキナーゼを用いたジアシルグリセロール(DG)の定量により刺激後10秒および5分でピークを示す2相性DG産生を認めた。[^3H]ミリスチン酸標識細胞の刺激によりホスホリパーゼD(PLD)活性の指標とされるホスファチジルエタノール(PEt)の産生を認め、2相目のDGがPLDを介した経路で産生されることが示唆された。 2.ホルボールエステル(PMA)でCMK細胞を処理しその分化誘導を試みたが、再現性あるデータを得ることが困難であった。 3.CMK細胞の分化誘導が再現性に乏しいため、すでに分化した細胞のイノシトールリン脂質特異的ホスホリパーゼC(PLC)とくにν型サブタイプの活性化機構について検討した。すなわち、中村ら(阪大)によって精製およびクローニングされた肝細胞増殖因子(HGF)でラットの初代培養肝細胞を刺激した。一方、未分化な細胞モデルとしてヒト肝癌細胞(HepG2)(正常肝細胞とほぼ同等にHGF受容体を発現)を同様にHGF刺激し、両細胞系の応答を比較検討し以下の結果を得た。 1)両細胞系をHGF刺激後イノシトールトリスリン酸(IP_3)を定量すると、ラット正常肝細胞ではIP_3が有意に産生されたが、癌化HepG2細胞では有意な産生を認めなかった。さらに、チロシンキナーゼの阻害剤ゲニステインで予め処理した細胞の刺激に伴うIP_3産生は抑制された。[^3H]イノシトール標識した両細胞系でも同様の結果が得られた。以上の結果は、HGF受容体が内因性チロシンキナーゼ活性を有するプロト型癌遺伝子産物c-metであることから、刺激に伴うIP_3産生が受容体チロシンキナーゼを介したPLCの活性化によることを示唆する。 2)HGFで刺激した細胞を可溶化し抗PLCν抗体で免疫沈降させ、免疫沈降物中のチロシンリン酸化タンパクをウエスタンブロッテイング法で検出した。分化した肝細胞ではPLCνのチロシンリン酸化を認めたが、癌化HepG2細胞では刺激に伴う変化を認めなかった。また、正常肝細胞のPLCνのチロシンリン酸化はゲニステイン前処理によって阻害された。したがって、HGF刺激に伴うPLCνのチロシンリン酸化は受容体チロシンキナーゼを介したものと考えられた。また、癌化HepG2細胞は正常細胞とほぼ同等にHGF受容体を発現しており、癌化細胞の受容体-PLCν間のシグナル伝達異常が強く示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Y.Banno: "Isolation of polyphosphoinositide-phospholipase C(Typeβ) from cytosolic and membrane fractions of human platelets." Platelets. 2. 69-77 (1992)
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[Publications] Y.Banno: "Effects of gelsolin on human platelet cytosolic phosphoinositide-phospholipase C isozymes." J.Biol.Chem.276. 6488-6494 (1992)
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[Publications] Y.Okano: "Tyrosine phosphorylation of phospholipase Cν in c-met/HGF receptorstimulated hepatocytes:Comparison with HepG2 hepatocarcinoma cells" Biochem.Biophys.Res.Commun.
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[Publications] Y.Banno: "Potentiation by cholera toxin of bradykinin-induced inositolphosphate production in osteoblast-like cell line,MC3T3-E1." Biochem.J.
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[Publications] 岡野 幸雄: "c-MET/HGFレセプターとその細胞内情報伝達機構" 実験医学.