1992 Fiscal Year Annual Research Report
2種類の基質を認識するトランスアミナーゼの蛋白工学的解析
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03670132
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
倉光 成紀 大阪大学, 理学部, 教授 (60153368)
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Keywords | 酵素 / 触媒反応機構 / 基質認識機構 / 蛋白質工学 / 部位特異的変異法 / キメラ / X線結晶解析 / アミノ基転移酵素 |
Research Abstract |
アミノ基転移酵素であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼは、酸性側鎖を持つアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)と中性側鎖を持つアミノ酸(例えば、メチオニン、フェニルアラニン)の間のアミノ基転移反応を触媒する。従来の「一基質一酵素」の考え方からすると性質の異なった2つの基質結合ポケットが存在するのは奇妙に思われるが、アミノ基転移酵素のように異なったアミノ酸基質の間でアミノ基転移を行う酵素の場合にはこの方が都合が良いと思われる。今までに、基質特異性が低く何種類かの基質に作用する酵素は知られているが、アミノ基転移酵素のように2種類の基質に対してそれぞれ高い特異性を示す酵素は今までほとんど知られていない。これら2つのポケットの立体構造を明らかにする目的で、まず、酵素と酸性基質との複合体についてX線結晶解析を行ったところ、酸性基質側鎖のcoo^-はArg292と静電的相互作用をする事が明らかになった。次に、酵素と中性基質との複合体のX線結晶解析も試みたが、まだ成功していない。そこで、コンピューターグラフィックスを用いて中性基質結合部位を予測したところ、その候補として2箇所が考えられた。いずれが中性基質結合部位かを確かめるために、予測された2箇所のポケットに存在するアミノ酸約15残基を遺伝子操作法で置換した。得られた変異型酵素を量産化し、酸性基質および中性基質との反応性を、ストップトフロー法などの分光学的方法で解析した。しかし、いずれのポケットも中性基質は結合しないことが示唆された。そこで、大腸菌の相同的組換え法を利用してキメラ酵素を作製し、酵素分子全体を広くスクリーニングして中性基質結合部位を検索した。その結果、中性基質の結合には、活性部位の他、蛋白分子全体の揺らぎも寄与しているこが示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Yano,T.: "The Role of Asp222 in the Catalytic Mechanism of Escherichia coli Aspartate Aminotransferase:The Amino-Acid Residue Which Enhances the Function of the Enzyme-Bound Coenzyme Pyridoxal 5'-Phosphate" Biochemistry. 31. 5878-5887 (1992)
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[Publications] Tanaka,T.: "Further Studies on Aspartate Aminotransferase of Thermorhilic Methanogens by Analysis of General Properties Bound Cofactors,and Subunite Structures" J.Biochem.112. 811-815 (1992)
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[Publications] 倉光 成紀: "蛋白質・核酸・酵素37(No.13)p2243-2256" 共立出版, 14 (1992)
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[Publications] 倉光 成紀(共著): "新生化学実験講座第1巻VII.タンパク質工学" 東京化学同人, 33 (1993)
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[Publications] 倉光 成紀: "細胞工学12(No.1)" 秀潤社, 6 (1993)