1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03670160
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
栄本 忠昭 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (60140779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立山 尚 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (80207068)
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Keywords | 胸腺 / 胸腺腫 / 胸腺癌 / 免疫組織化学 / p53たんぱく / 癌抑制遺伝子 / p53シークエンス / 点突然変異 |
Research Abstract |
本年度は胸腺腫および胸腺癌における癌抑制遺伝子p53の変異と異常たんぱくの発現を検索した。胸腺上皮性腫瘍でも本癌抑制遺伝子異常が存在するか、また、胸腺腫と胸腺癌および胸腺腫の非浸潤性腫瘍と浸潤・転移性腫瘍で違いがあるか否かは興味深い。 非浸潤性胸腺腫13例、湿潤/転移性胸腺腫9例、胸腺癌14例につき、まず、ホルマリン固定・パラフィン包埋した組織切片をp53に対するモノクローナル抗体DO7を用いてABC法による免疫組織化学染色を行った。陽性腫瘍細胞数を算定し、p53蛋白低度、中等度、高度発現群に分けた。非浸潤性胸腺腫では1例は発現陰性で、7例が低度、4例が中等度、1例が高度発現を示した。浸潤/転移性胸腺腫では3例が低度、6例が中等度発現を、また、胸腺癌では6例が中等度、8例が高度発現を呈した。 次に、代表的9症例につきp53遺伝子変異の有無を検索した。パラフィン切片よりDNAを抽出し、エクソン5-8(hot spots)をPCR法で増幅し、サブクローニングを行った後、蛍光法自動シークエンス装置を用いて塩基配列を解析した。p53たんぱく高度発現群2例中1例にはコドン196、200の2か所に、また、他の1例にはコドン256の1か所に点突然変異が認められた。中等度発現群4例でも全例にコドン201、211、229、276の各1か所の点突然変異がみられた。さらに、低度発現群の3例でもコドン232、267、276の各1か所に点突然変異が証明された。 以上より、ほとんどの胸腺腫および胸腺癌でp53遺伝子変異が早期に起こることが推定されるが、点突然変異の部位は一定しないことが分かった。しかし、異常p53たんぱく発現は胸腺腫より胸腺癌で顕著に増加し、胸腺腫ではたんぱく発現の度合が病期の進行に関連することが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 立山尚,稲垣宏,藤吉行雄,水野力,多田豊曠,栄本忠昭: "胸腺癌の免疫組織化学的検討" 日本病理学会会誌. 81. 159 (1992)
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[Publications] 藤吉行雄,立山尚,稲垣宏,多田豊曠,栄本忠昭,水野力: "胸腺腫におけるサイトケラチン発現パターンの免疫組織化学的検討" 日本病理学会会誌. 81. 201 (1992)
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[Publications] Tateyama H,Mizumo T,Tada T,Eimoto T,et al.: "Thymic epithelial tumours.Evaluation of malignant grade by quantification of proliferating cell nuclear antigen and ……." Virchows Arch(Pathol Anat). 422. 265-269 (1993)
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[Publications] 栄本忠昭: "重症筋無力症における胸腺" 病理と臨床. 11. 24-28 (1993)
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[Publications] 立山尚,多田豊曠,栄本忠昭: "胸腺癌の組織型" 病理と臨床. 11. 47-52 (1993)
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[Publications] 立山尚,水野力,稲垣宏,藤吉行雄,多田豊曠,栄本忠昭: "胸腺上皮性腫瘍における異常p53蛋白発現" 日本病理学会会誌. 83. 239 (1994)
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[Publications] 栄本忠昭(分担執筆): "上皮性胸腺腫瘍の基礎と臨床(正岡昭,松山睦司編)" 癌と化学療法社, 20 (1992)